#1

「まっつーーーーん!!!」

「あ?」


どふっ!ゴキッ!!


「ぐおっ!…いってーな!!なんだよ!!」

「いたっ!!いたんだよっ。」

「誰がっ!!!」

「サンタさん!!!」

「はぁ?!サンタは日本にいねーよ!!フィンランドだよ!!」

「いたのっ!!」

「まっつーん。あっ、なっちゃんもいるー。おはよー。」

「恵ちゃんも聞いてよ!!」

「うわっ。新学期早々元気だねー。」

「あのねっ!クリスマスに会ったサンタさんいてねっ!!偶然にもここの女子でマフラーも付けててっ。」

「うんうん。ちょっと声うるさいなー。ボリューム下げてよー。」

「あっ、それ元カノにあげるはずだったマフラーなんだけど、何て声かけたらいいかわかんないからとりあえず皆に聞いてみよーと。」

「恵一、落とし物〜。ホイ。」

「!!……うるせーっつってんだろーが。何で一回で言う事きけないかなぁ。イケない子だよねー。」


※恵ちゃんはムチを持つとドS化します


「えっ!?なんでSになってんの!?好きな子限定だったよね、それ!!」

「彼女いなくて溜まってんだってー。気をつけろー。」

「…おはよ。何してんの、あの二人。」

「ギャアアアアァ…。」

「あー、夏樹のサンタ話知ってる?」

「そういや来る時、ゆるゆり読んでたんだけどさ。いやぁ、あかりんがかわいくて。」

「オイ、オレの質問どこいったよ。」

「あぁ……なんか、あーちゃんが言ってた気がするけど覚えてない。」

「だよなー。」

「二人のこと止めなくていいの?」

「もう、終るだろ。おっ、いーところでありさが来た!」

『おはよーって、恵ちゃん何してるの?』

『なっちゃんが、イケない子だからお仕置き!』

「やっと、あーちゃんきた!助けてよぉ〜。」

『そろそろやめてあげたら?いじめすぎたらつまんないよ。』

「それも、そうだね。はーー、すっきりした。」

「いいムチさばきだったな。」

「いたいー。もーヤダ……。」

「大丈夫?」


新学期早々五人はドタバタうるさくやってます。主に、なっちゃんがですが。










「ふーん、なるほどー。クリスマスにそんな出会いあったんだー。いーじゃん。」

『そう言えば、そんな話してたねー。』

「あーちゃん家で話したじゃん!二人とも忘れちゃうなんてひどいよ!」


そうなのです。フラれんぼクリスマス会のときになっちゃんは話していたのです。誰も気に留めてなかったようですが。私もすっかり忘れてました。


「さっき見た時声掛けりゃ良かったじゃねーか。バカだな。」

『なっちゃんに出来るわけないでしょ、まっつんバカだね。』

「ちょっと、あーちゃんまでひどい!それが出来ないから困ってるんだけどさーー。」

「なんで、できないの?」

「んー、もらったティッシュがカラオケので…。」

「宣伝で配ってたんだ!!」

「だったら相手、お前のこと覚えてねーかもな。気にもしてねーよ。」

『さすが、乙女男子なっちゃん全開な出会い方だね。』

「でも、見ず知らずの俺があげたマフラー使ってたってことは、もしかしてもあるかなって…。」

「もしかしてって?」

「…えっとねー、俺的になんだけどー。」



なっちゃんの妄想力は本当にすごいと思います。ちょっと引くぐらいに乙女思考。なので割愛させていただきます。










「なるほどね。…でも名前どころか学年もクラスもわかんなくて接点ないし声かけにくいってことなんだ。」

「うんうんっ!!その通りですっ。さすがつよぽん!理解が早い!!」

「ったく、しゃーねーな。見かけたら俺に言えよ。声掛けやっから。きっかけ作ってやんよ。」

「ほんとっ!?何て!!?」

「そーだなー、入りは君超かわいーねーつって!」

「ダッサ!!!やめてそんなの!!」


まっつんらしいけど、ちょっと無いですね。


「はーい!!俺も声掛けたげるー!!!」

『いや、恵ちゃんのはマニアックすぎるからやめといたほうがいいと思うよ。』

「ひどいよ、あーちゃん。」

「いや、あーちゃんが正しいよ!!」

「…オレは声かけないわ。スルーするわ。」

「うん、いいよそれで!!」


つよぽんらしいけど、声掛けないんじゃ解決になりません。


『うーん。困ったね、どうしよっか。』

「あーちゃんは!?何かないの?」

『無いこともないけど…。』

「なになに!?教えて!!」

「どんだけ他力本願なんだ、オメーはよ!!ふざけんな!!」






「羽柴くん!!いいところに!!」







ニコニコスマイル先生こと片倉先生がやってきました。どうやらなっちゃんに用事があるみたい。


「あ、兄ちゃん!!」

「…学校では先生って言いなさい、片倉くん。」


片倉先生が、恵ちゃんのこと片倉くんって呼んでるのはいつ聞いても違和感があります。お互い片倉だからでしょうか。まぁ、どうでもいい話ですが。


「羽柴くん、今日日直だよね。少し手伝って欲しい事あるんだけど……。いいかな?」

「えっ、あ、ハイ……。俺だけですか?」

「ああ、もう一人くらいいてもけど…。」

「ねーだれかー…。」

「「「『がんばって来いよ(来てね)!!』」」」

「………。」


私たちはみんな肝心なところで薄情者です。きっとベタベタしないのが仲良しの秘訣ってところでしょうか。














「かくかくしかじかなんだよね!!」

「なんで、そーなんの?」

「だって準備室で寝てるってさ!!あと若干服も乱れてたような!!!」

「すぐそーゆー発想すんのはよくないぜ、ムッツリ君!!」


私たちはちょうど五人ともヒマだったので、カラオケに来ています。

どうやら、なっちゃんはサンタさんこと運命の女の子と片倉先生の手伝いに行った準備室で再会を果たしたもよう。なっちゃんには片倉先生がその女の子を特別扱いしてるように見えたみたいです。


「んで、どーなの?おとーとくん!!」

「オレに聞く?兄ちゃんの事は聞いても詳しく教えてくんないし。昔から謎が多いよー。」

「片倉兄はロリコン疑惑?」

『まっつん、それはまずいでしょ。』

「あっ!内緒って言われたから他の人に言わないでね!!」

「なっちゃんてば、口軽い〜。」


なっちゃんの目撃情報から先生にロリコン疑惑まで持ち上がってしまいました。先生、本当にごめんなさい。


「…なっちゃんはさー…その小早川さん?が好きなの?」


相変わらず鋭いところを突いてきます、つよぽんは。


「え?」

「ただちょっと気になるだけなのか、普通にラブなのかどっちかなーって思って…。」


なっちゃんが悩み出してしまいました。頭上にたくさんのハテナが浮かんでます。

「…わかんないならごめん…。歌いなよ。」

「うん、わかんないから歌おう!!」

「歌って歌ってー。」

『私も歌うー!』







ガチャ




「失礼します。飲み物お持ちしました。コーラの方…。」

「あっ、はーい。って、え!?」

「どしたの?」

「…あ、さっきの…。」

「はっはい、羽柴です!!」

「羽柴くん…。………。どうぞごゆっくり。」

「はっはい!!」


この店員さんがなっちゃんの気になる人みたいです。なんだか、なっちゃんのタイプとは少し違う気がしますが。


「今の子なんだー。」

「小早川さんだっけ?」

「お前の好きな清純派?とちょっと違うなー。」





「好きだわ!!」






「今ので!?ずっと無表情だったけどあの子!!正直愛想ない!!」

『けど、いい子だよー。』

「「「「え?あーちゃん(ありさ)、小早川さんのこと知ってんの!?」」」」

『あの子が小早川さんだってゆーのは今知ったけどね。』


そう、あの子(小早川さん)とは、ちょっとした知り合いなのです。お互い名前は知りませんでしたが。


「とりあえず、いっぱい頼んでまた小早川さんに来てもらいたい!!フリードリンクだもんね!!」

『ちょっと、なっちゃん……って止めても無駄そうだね。』

「オレたち歌うよー。」










とりあえず、色々と頼みましたが小早川さんは全然来ません。むしろまた来た方がタイミング良すぎて怖いですが。


「彼女全然来ないね…。」

『なっちゃん、飲み過ぎなんじゃない?大丈夫?』

「……うん……。ちょっとトイレ…。」

「『いってらー』」












「行けっ!!」


トイレ帰りのなっちゃん、まさかの怖いお兄さんに絡まれてるっぽい小早川さんに遭遇です。


「助けてやれ、男なら!!」

「なっちゃんなら出来るよ!!」

『なっちゃん、ファイトー!』

「……。」

「でっでも、どうやって…!!ケンカとかしたことないよ!!」

「何でもいいんだよ!!適当な事言え!!」

『ほら、早く!!なんとかなるよ、きっと!』

「ムチ使いなって!!」

「えっ、え…えっ…!?」


なっちゃんがキャパオーバーしてます。変なことしださないといいのですが…。


「…あっ、あのっ!!……おっ俺の女なんで、やめて下さいっ!!」

「「「『………!!』」」」

「…あの…。」

「はッ、はい。何でしょう!!」

「あっ!!走って逃げるとこですか!!や!逃げましょう!!」

「あ…えっと、そーじゃなくて。この方たち外人さんで日本語わかんないみたいなの……。」

「…え…?」









「あ、オレの出番?」

『私、めんどくさいから。つよぽんいってらっしゃーい。』


やっぱり、こんな展開でした。なっちゃん、放心状態で口から魂出ちゃってます。














翌日。


「おはよー…。」

「オレの女なんだかんな!やめろってばよ!!」

「きゅん!」

「あ、なっちゃん、おはよー。」

「おはー。昨日はおもしろかったな!!」

「なっちゃんサイコーだったよ!!」

『おはよ、なっちゃん昨日はかっこよかったよ。…多分……。』

「………。…みんな…。ひどいよーーーー!!!」

「えーーーっ!!泣くの!?」

「なっちゃん、ごめんっ!!!」


なっちゃんが泣き出してしまいました。涙どころか鼻水まで出ちゃってます。


「ごめんね、おもしろくてつい…!!遊んじゃった…。」

「オレっ…!!すげーショックなのに…!!ひどいよっ。」

「わかったから、ホラ!!鼻かめ!!」

「……なっちゃん、大丈夫だよ。誰だって一度や二度失敗するもんだよ…!!」

「…つよぽん……。」

「それよりさぁ、先生との関係が気になんない?」


つよぽん、空気読めなさすぎです。今の絶対なっちゃんの心にぐっさり刺さっちゃってます。


「おまえっ、空気読めよ、ホントさぁ!!」

「?」

「なっちゃん、たぶん忘れてたんだから!!バカだから!!」

『さりげなく、恵ちゃんもひどいよ。なっちゃんバカだけどさ。』

「………。…いや、もういいよ…。オレって単純みたいだし…。一人で盛り上がってかっこつけよーとしたりして……。先生うんぬんより元からダメなんだよ…。本当バカだったよ俺……。」

「ホラッ、謝れっ!!!」

「タイミング間違った、ごめんー。」

「もっと大きな声で!!」

「フフフフフフ…。」

「なっちゃんが暗闇に逃げた〜〜。戻ってきてよ〜〜。」

『なっちゃん、廃人と化したね。背景ダークだよ。かなり深い闇だよ。』

「どこ見てんだよ……。怖ぇえ…。」


もはや、なっちゃんの精神的ダメージは計り知れません。

あ、クラスの女子がノートを集めにきました。


「あ、なっちゃんの分あとで行かすからいーよ。」

「わかったー。」


こんなときでも、ダークに堕ちたなっちゃんの代わりにノートを出してあげたりしないのが私たち。相変わらず冷め切っております。









ノートを出して帰ってきたなっちゃんは、さらに廃人化が進んでいました。まるで人生のドン底にいるよう。


「どうしたの?」

『なっちゃん、生きてる?』

「かくかくしかじか。」

「あー…。」


どうやら、またしても準備室で小早川さんに遭遇したらしいです。そこで先生とできちゃってるっぽい場面をみてしまったとか。そりゃ、落ち込みますね。
















「つよぽん、おはよー。今日も寒いねー。」

「そーだねぇ、…特にあそことか。」

「まだ、ヘコんでんのー?」

『なっちゃんが立ち直るのはまだまだ先っぽいね〜。』

「じめじめ暗いし、活いれよーかなぁ…。」

「お…、夏樹、客だぞ。」


なんと、話題の人物小早川さんがクラスを訪ねてきました。しかも、なっちゃんに用があるみたいです。


「?……えっ。……えっなんで…オオオレッ!!?」

「お前だよ!!何に怯えてんだ!!いいから早く行けっ!!いつまでもうだうだしてねーで、言いたいことあんなら言って来いよな!!うっとおしいから!!」

「………。…わかった。」

「『なっちゃん、がんばってね!!』」


「あっ、…アイツ、アレだめだな…。」

「かなりテンパってるよね…。」

「タイマンって…、ないわ。」

『何とかなるといいけど…。』











「ごめんなさい、いきなり。片倉先生にクラス聞いて……。」

「いえっ!!何でしょうか!!」

「これ…返すね。」

「え、あ、マフラー。なんで…?」

「クリスマスに知らない人にもらって、かわいいなと思ってずっと使っちゃってたんだけど…。ごめんなさい、羽柴くんって気がつかなくて…。おわびにカラオケの割引券も入れといたので…。」

「えっ、わざわざ!?」






「…。」

『なっちゃん、ちゃんと話せてるっぽいね。』

「オレたちのぞいてばっかだね!!」

「いーんだよ。」


私たちはなっちゃんと小早川さんのやり取りを覗いて……いえ、見守ってあげてるのです。






「全然いーのに…!!逆にマフラー使ってくれてうれしかったくらいだよ俺!!」

「…なんで?」

「恥ずかしい話なんだけど、彼女にあげるハズだったマフラーでフラれたから手にあまってたんだ…。だから俺の方こそ、そんな物で申し訳ないという気持ちが…。」

「…振られたのかなっていうのは少し思ってたけど…。」

「えっ、そーなの!?」

「あの時、ちょっと泣いてたし…。あれ?かなりかも…。」

「!!うっ…お恥ずかしい。」

「私はあまり気にしてなかったけど…、よく考えたら羽柴くんの思い出とかある物かもって…。」

「ないない!!全然ないよ!!ないからあげたんだし!!」

「そう…?でも一応返しておくね、悪いので。」

「あ…うん…。」

「じゃあ、これで。」

「…あっ!!えっと…。」

「あ、そうだ。カラオケでかばってくれてありがとう。じゃあ。」

「……………あのっ!!小早川さんて、片倉先生とつき合ってる!?」








「うわ、聞いた!!」

『なっちゃん、直球すぎ!!』

「告るんじゃねーのかよ。つまんねぇな。」







「え…?」

「…よく先生のとこで寝てるし…。あの…下世話かもしれないけど、どーなのかなって思って…!!」

「ああ……。私、鼻炎持ちだから。」

「?」

「薬の副作用でよく眠たくなるんだけど、保健室行きすぎて気まずいから片倉先生の所で休ませてもらってるの。クリスマスも鼻水大変そーな人いるなと思ってティッシュを…。」

「………。」

「なのでつき合ってるとかはなくて…彼氏いないし…。」

「そ、そーなんだ。ごめんね、俺、変なことを聞いちゃって…。」

「いいえ。また、歌いに来てね。」

「………うん…!!」






小早川さんと別れてなっちゃんがこちらへ戻って来ました。


「顔、赤っけえ!超赤い!!ぎゃははっ。」

「ねぇっ!!!最後笑ってくれたよ!!オレ、今ヤバイ!!うれしくて!!」

「いーことじゃねーか。」

『かわいかったね、小早川さん。』

「タコみたい。」

「またカラオケ行かないとねー。」


告白したわけでも番号を聞けたわけでもないけど、なっちゃんにとってはきっと大きな一歩だったはずです。頑張りの代償として顔は茹でダコのようですが。



さて、来月はバレンタイン。
なっちゃん、小早川さんからもらえるといいね。



mae ato


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