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12月初旬。中間テストも終わって残すことと言えばクリスマスということで浮かれてる男子が一人。


「ねぇねぇ!俺のクリスマスデートプラン会議しよう!」

「「いや、無理」」


はりきってそう持ちかけるなっちゃんに、即答のまっつん、恵ちゃん。


「どーして!?考えてよ!!オレ初彼女だよ!?失敗したくないじゃん!!2人とも彼女いて慣れっこだし、あーちゃんも女の子として意見聞かせてよ!」

「こっちだってプラン考え中なんだよ。1人で考えろ。甘えんじゃねぇ。」

「オレも考え中ー。」

「ええっ!?あ、あーちゃんは?」

『クリスマスはバイトだよー。』

「バイトなんてしてたっけ?」

『ほらウチ、ケーキ屋さんだからさ。クリスマスは家の手伝いなんだ。』

「そっか、それは大変だね。って、それとこれとは話がちがーう!」


話を逸らしたのですが、すぐにばれてしまいました。仕方ないからやんわりと断ることにします。


『なっちゃん、自分で考えることをオススメするよ。』

「そんなぁ〜。」

「あんなぁ、オレなんて夏樹より大変なプランなんだよ。わかってっか?見ろ、このスケジュール。」

「え?どんな?」

『まっつん、今彼女何人いるの?』

「5人。」


相変わらずな、まっつん。特定の人はつくりません。話を聞くとどんなプランにするかっていうよりはどんな言い訳するかに悩んでるみたいです。


「相変わらず最低だね……。まっつん…。」

「俺みたいに一途になりなよー。」

「や、俺は恵ちゃんのも賛同しかねるけど……。」

「あ、電話…出てあげるかー。もしもーし……。」


恵ちゃんは、かなりのドS。一途なのかもしれないけど、電話の内容を聞く限り健全からは一番遠いです。


「…とゆー健全なお付き合いを推奨するよ。」

「「『全然、健全じゃないし。』」」

「つか、自分のことご主人様って呼ばせてんの?」

「まぁ、躾の延長で…。」

『なんで、そこで恵ちゃん照れてるの。』

「どーゆー躾?詳しく!!!」

「…………。」


あ、健全男子校生なっちゃんが固まっちゃってます。


「えっとーーまず×××を×××して●●●したあと「わぁーーーーーーっ!!」」

「なんだよ、いーとこで。うるせーなー。」

「いくないよ俺ら高校生!!なに、あーちゃんもちゃっかり聴いてるの!!」

『だって、恵ちゃんの話面白いから。』

「もちろん同意の上だよ?問題ある?」

『まぁ、同意の上なら個人の自由だよね。』

「あります!!もうっ!!つよぽんも何か言って!!」





がらーん





「…つよぽんは?」

「すぐ帰ったよ。冬コミの〆切がー!!って言って。」

「夏もそんなこと言ってなかった……?」


そう、なっちゃんの唯一の味方であるつよぽんこと直江剛君はオタクなのです。冬コミの〆切間近の最近は光速で帰宅します。本当、気がついたらいなくなってます。


「も〜〜っ!!俺の唯一の味方が〜ーっっ。」


なっちゃんがめそめそし出しました。本当に彼はよく泣きます。そんな姿も慣れれば可愛らしくみえますが。










色々とありまして、なっちゃんの彼女に会いにいくことに(勿論なっちゃんには無断で)。なっちゃんが絶賛する百合ちゃん、どんな女の子かとても気になります。




「あれ?夏樹じゃーん。」

「『ぐーぜーん!!』」

「夏樹くんの友達?」

「あ…えーっとー…。」

「松永です。」

「片倉でーす。」

『ありさでーす。』

「小林百合です。はじめまして。」


待ち伏せ作戦成功です。なっちゃんの話通り百合ちゃんはとても可愛らしい女の子でした。その後ご一緒させてもらったお店で食べたパスタは絶品でした。










「怒んなって、夏樹!!百合ちゃんと話せて楽しかったぜ!」

「パスタおいしかったよ!」

『百合ちゃんかわいかったね!』

「3人が楽しんでも意味ないじゃん!!」


なっちゃんご立腹です。


「……まァ…帰ってから電話でこんどは2人きりで会おうね!って言われたのはうれしかったけど…。」


今度は惚気だしました。


「でも、いー店だったな。うまいし、高かったんじゃね?」

『そういえば、なっちゃんにご馳走になったよね。』

「んー、5人分で8000千円…?」

「高ッ!!!オレ2つも食べちゃった、ゴメン!!」


なっちゃん太っ腹です。バイトはしてないので懐がかなり寂しいようですが、彼女のためならってやつですね。


「クリスマスは年一回だしがんばるよ俺!!!三人とも邪魔したおわびに買い物つき合ってよね!!」

「えー、プレゼントなんて言葉ひとつで良いモンになんだって。」

「オレはまっつんみたいなホスト気質じゃないの!!」

「オレが買ったやつだって彼女にぴったりの特別激しい「ごめん、聞いてないから!!」」

『私、付き合ってもいいよ?』

「あーちゃん、神様!!」

「わかったよ、俺らも付き合ってやるよ。」

「じゃー、次の日曜日とかでいーの?」

「うん、いいいい!!」

「君達、今補習中なのわかってるかな?」


そう、私達は今補習中なのです。私はヒマだから三人に付き合ってるだけですが。なっちゃんに注意する片倉先生のニコニコ加減がいつみても怖いです。ほんと、片倉先生降臨ってかんじです。


「恵一も、もう少し勉強しなさい。」

「はーい……。」


言い忘れましたが、片倉先生は恵ちゃんのお兄さんです。この人にもドSの血が流れているんでしょうか。気になりますね。











そんなこんなで日曜日。なっちゃんのお買い物の付き添いです。


「そういえばさ、恵ちゃんと片倉先生って似てないよねぇ。」

「そう?昔は似てるねって言われてたけどね。まァ、頭は兄ちゃんのが全然いいんだけど。オレはアホー。」

「へー。」

「あ、あと趣味は同じだよ。しかも兄ちゃんの場合R25くらいで。オレなんて全然ヒヨッ子でさー。」

「えぇ!!?25って!?」

『やっぱり、そうなんだ。いっつも、先生のニコニコ加減が怖いな〜って思ってたんだよね。恵ちゃんと似てるっていうかさぁ…。』

「あーちゃんにはバレてたか。つまり、あんな人の良さそーな顔して実はドSなんだよ。」

「全っ然見えないよ!!てゆーか知りたくなかった!!!…なんなの片倉兄弟……。」

「?…さぁ……?」

「「『ま、それはさておき早くプレゼント選んで。』」」

「はーい。」


すっかり脱線してましいましたが、今日はなっちゃんのために私たち三人は来たのです。


「………。何がいいかわかんない〜〜。いっぱいあって〜〜。」

「「『……………。』」」

「も〜〜クリスマスコーナーありすぎだよ〜〜。」

『彼女さんに欲しいものとか聞いてリサーチしなかったの?』

「!!リサーチ!?」

『………してないんだ…。』

「なっちゃんて、いちいち考え甘いよねぇー。」

「うう…。」

『恵ちゃん、言い過ぎだよ。なっちゃん震えてるから。』

「「てことで、俺らマックで待ってるね(わ)!!」」

「長くなりそーだし。」

「終わったら、呼んで。」

「えーーーーッ!!あ、あーちゃんは?」

『私もマック行くかな〜。なっちゃん頑張って!』

「そんな〜〜〜。」


「狩りでも行くかー。」

「そーだねー。」

『私もやるー!』













マックでなっちゃんを待ちはじめてかなりの時間が経ちました。(およそ三時間経過)


「なっちゃん遅いねー。」

「んー。」

『まぁ、なっちゃんだからねー。


「すげー迷ってそうだけど、オレらも狩りばっかりしてていーわけ?日曜日にさー。」

「たのしーよ、オレは。」

『そんなこといってると、まっつん狩るよ〜。』

「ちょ、ありさやめろよ!」

『ほらほら〜。』

「ハンマーでオレをぶっ飛ばすなって!」

「あーちゃんて地味にSっ気あるよね。」

『恵ちゃんと一緒にしないでよー。』

「お!……いい感じの女子が来ましたよっと。」


さすがまっつん。女の子にはすぐ気がつきます。


「てことでナンパして来ますか。モンスターじゃなくて女を狩ろう!!」

「4対2で?勇気あるなー。」

「ヨユーヨユー。」

『いってらっしゃーい。』

「って、あれ?あの一人……なっちゃんの…。」


私は興味ないので二人を見送ろうと思っていたら恵ちゃんが何かに気がつきました。


「ん?」

『あ、あの子…。』






「あー羽柴?ぼちぼちかな。こないだも超いい時計つけててー。」

「マジー?」

「クリスマスも期待じゃん。」






「「『…………。』」」

「「おっとぉ?」」


女の子って怖いです。本当に。










「買えた、買えたっ!!!これでばっちり!!とりあえず、三人呼んでーってどこにいるのかな。……あっ、まっつん、恵ちゃん、あーちゃん。」

『……なっちゃん。』

「ちょーど良かった!!買い物終わったよ!!いやぁ、中々いい物が買えました!!」

「あげなくていーんじゃね?」

「え?」

「俺、オブラートに包んでとか無理だから普通に言うけど、あの女良くねーわ。あいつただ金目当てで付き合ってるだけだから。」

「はい?」

「なんか、お前を金持ちってカン違いしてんだよ。」


オブラートに包めないのは如何なものかと思いますが、これもまっつんなりの友情。なっちゃんを思うがゆえにハッキリと事実を言ってあげてるのです。当のなっちゃんは、まっつんの言うことが信じられないようですが。


「うっうそだー!!何言ってんの…百合ちゃんはいい子で…。」

「本当だよ。さっきマックで見かけて、そーゆー話してたんだ。それに、こないだ会った時と雰囲気も違って……あきらかにサディスティックで愛がない「お前、もう黙れ。」」

「ちょっと、恵ちゃんまで何言ってんの!」

『二人とも嘘なんか言ってないよ。私も見たもん。百合ちゃんとは別れたほうが、なっちゃんのためだよ。』

「またまた!!俺のこと邪魔しよーとしてるんでしょ?やめてよ、そーゆーのはさぁ!!」

「は?!んなわけねーだろ、バカか!!なんだったらマック戻るか?まだいるかもしんねーし、見たらあの女が良くねーってわかんじゃん?」

「行かないよ!!だってそんな子じゃないし、必要ない!!あんまり失礼なこと言うと怒るよ!!」

「はぁ〜〜〜!?」


何やら険悪ムード。まっつんのイライラがだだ漏れです。


「俺らの事、信用しないわけ。」

「信用もなにも、今まで信用できることなかったじゃん。邪魔するし、変なことしか言わないし。」

「…オレらの方が女慣れてるってお前言ったよな。ぶっちゃけ、オメーみたいなバカが騙されるんだよ。女に!!!」

『ちょっと、まっつん言い過ぎだ「でも、まっつん達は百合ちゃんのことほとんど知らないじゃん。俺のが知ってるんで!!大体ただれた恋愛しかしてない人たちに言われたくない!!」』

「へぇーーーーーっ……」


まっつんも、なっちゃんも一歩も引く気はないよう。もう、私じゃ止めることはできなさそうです。


「じゃー、せーぜークリスマスに痛い目見ろよ。」

「見ないし!!うまくいくから!!」

「行こーぜ、恵一、ありさ!!もー知らんっ。」

「あー、うん……。」

『なっちゃん、ごめんね…。』


険悪ムードのまま解散してしまいました。明日からの学校が憂鬱です。











「おはよー。」

「おはー。」

『あ、おはよー。』


まっつんとなっちゃんが目を合わせるなりバチバチと火花を散らしてます。どうしてこんなことになってしまったんでしょう。つよぽんに助けて欲しいところですが生憎、彼はインフルエンザのため欠席。恵ちゃんも私も平和主義なので、この事態はなかなかの地獄です。














クリスマス当日。男子三人はデートのようですが、私は家の手伝いでケーキを売っています。なっちゃんが百合ちゃんとどうなったか心配です。













夏樹side


百合ちゃんと待ち合わせして、予約してるお店に案内してもらったら高級ホテルだった。

金目当てでつきあってるんだよっていうまっつんの言葉が頭を過る。百合ちゃんのことは信じたいけど、高校生がこんなお店を予約するってどうなんだろう。



「………。…あのさ…先にプレゼントを渡したくて……。」

「ほんと!?うれしいー!!」

「これなんだけど……。」

「わーーっ、見てもいい?」

「前さ…寒がってたから、暖かい物がいいと思って…。イメージなの選んでみたんだ。どうかな?マフラー。使ってくれる?」

「……あー…。ごめん…これ、あたし好みじゃないかも……。プレゼントならさ、もっといい物がいいなぁ。初めて見た時から夏樹くんブランド物色々もってるなーって思ってて。あたしもそーゆーの買って欲しいなー。とりあえず、先にご飯行こっ!それから買い物!ね?帰りまでこのマフラー持っててー。」


ああ、やっぱり…そうなのか。これが本当の百合ちゃん。


「行かないよ…。そんな高いお店行けないし、オレの持ち物だって姉ちゃんのおさがりだし…。今までも結構無理してて…。」

「は?何?マジで?…ありえない!!」









女の人って怖いな。まさか、百合ちゃんがあんな女の子だったなんて。

いや…本当は心のどこかで少しアレ?って思ってたかも。でも、初めての告白で彼女だったからそんなはずないって自分に言い聞かせてたんだ。オレってバカだなぁ。


「あーもー!!涙だけでいいのに!!鼻水!!ティッシュどこ!!ないっ!!!」

「どうぞ。」

「あ…どうも……。」

「いえ。」


クリスマスにティッシュ配りか。こんなに寒いのに頑張ってるんだな。そうだ……。


「あの!!よかったら、これどーぞ。自分いらないんで!!」

「え…。」

「風邪ひかないよーにして下さいね。サンタさん!!!」

「…………。変な人……。」










三人になんて言おう。あんなケンカしといて…バツが悪いです……。いっつも変なことばっか言ってるのに、こんタイミングで正しいこと言うなんてズルいよ。

…………てゆーのはウソです。意地はってるだけです。

謝れば許してなくれるかなぁ。オレがバカでしたって言えばいいのかな…。

でも、みんな…きっと今頃……。





ばたっ。





「え…?あ……。」

「あれ…?」

「…まだ8時前だけど……。なんで皆1人…?」




ヤバイ!!!な…なんて言えば…。




「えっと……、えっとですね…「フラれた」」

「えっ、まっつん!?」

「フラれたっつーか、逆に遊ばれてたっつーか……。つき合ってた五人全員繋がってて…二人目の時はネタばらしされて、いい笑いモンに…。」

「「うわぁ…。」」

「うわああああーん。オレもフラれたよー!!!もう、もの足りないからバイバイってー!!他のドS男のとこにーーー!!」

「「…………。」」

「…………なんか…悪かったな…。お前のことエラソーに口出ししておいて、人の事言えなかったつーか…結局こんなんで……。」

「ぷっ、ふくくく…あははははっ。」

「てめっ何笑って…。」

「だって!!みんなしてさー。あははっ。オレもねーフラれた!!二人とあーちゃんはわかってたかもしれないけど、その通りだった!!あははっ。ほんと、ごめん。」

「って、笑って言うこと!?」

「ちゃんと、あやまれよ!!」

「やーだって、止まんない!!はははっ。三人して、すげーバカなんだもん!!」

「………本当だよ。だっせーな、俺ら。」

「あははっ。だよねー。」

「やり直すか、クリスマス。」

「いいね!!ケーキとかおやつとか買おうよ!!」

「それなら、あーちゃん家いかない?」

「あ、それいいね!恵ちゃんナイスアイディア!」

「めっちゃ、食うかな。ヤケ食い!!


「あれだね!!」

「フラれんぼクリスマス!!で、あーちゃんに慰めてもらおー!!」

「うわぁー、やだー。」

「あははっ。」















『それで、ウチにきたの?』

「「二人で空気悪くしてすみませんでしたー!!」」

『もういいよ、まっつん、なっちゃん。それじゃウチでフラれんぼクリスマス会やろっか!』

「あれ?もうケーキ売るのは終わったの?」

『これで、最後の一個だから…みんなで食べよ?』

「ってか、お前のそのカッコ!!ミニスカサンタって!!あははっ!」

『…………まっつん?』

「お、俺は似合ってるもおもうよ、あーちゃん!ね、恵ちゃん!」

「オレもオレもー!」

『じゃあ、まっつんだけケーキなしね。』

「それは、勘弁して下さい!ありさ様!!」

『ありさ様って何〜?まっつん、まさかのM?……ま、冗談だよ。ママの作ったご飯もあるし、家入ろっ!』

「「「おじゃましまーす!」」」
















「おはよー」

「あっ、つよぽん終業式間に合ったね。」

『つよぽん、久しぶりだね。』

「インフルエンザもういーのっ?」

「うん、22日くらいにはもう元気だったよ。あ、そうそう。君達のクリスマスの話あーちゃんから聞いたよ。フラれんぼクリスマス会。」

「ちょっと何言いふらしてんだよ、ありさ!!」

『楽しかったから、いいでしょ?』

「ほーんと、楽しかったよね。」

『今度はつよぽんも一緒にね!』







やっぱり、みんな仲良しが一番です。ケンカすることもあるけれど、ケンカするほどなんとやら。
明日も明後日もその先も、五人が一緒なら楽しみです。



mae ato


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