特に意味もなく、俺は歩く。ていうよりかは、歩くことに意味を持たせたことがないからこれは日常の一部。
まぁなんで歩いてるかって言われたらそりゃ、行きたいところがあるからに決まってるじゃない。

「おはよーございまーす」
「…ざーす」
この街に相応しい薄汚れた建物のドアを押すと相応にやる気のない声が俺を出迎える。そのやる気のなさの三割は俺が原因ってわかってるけどね。
レジに立つ彼の真ん前を陣取って、ちょっと小洒落た感じにカウンターに肘を置いて会話してみる。
「おはよー夢ちゃーん、いーい朝だねぇ」
「お前の目はどこについてんだ俺は朝から爆発音で目覚めてんだよしね」
案の定冷たい返事しかもらえない。わかってたけどね。
「えーやっだ夢ちゃん物騒ー」
「その喋り方なんなの?ねぇまじでなんなの?むかつくんだけど」
「わーざーと、だよ」
それだけ言って俺は素早くバックヤードに退散する。後方から夢ちゃんの殺すぞって言う声が聞こえた。


何故かこのコンビニはバックヤードからスタッフルームに繋がる道が極端に長いし細い。通路の両端に段ボールが積み重なってるし、そのせいで明るくないし、やたら狭く見えるし、実際狭いしで大変不便だ。という感想を俺は五年も前から思って一つも改善されてない。すごいよね。
「おはようございます、店長」
にっこり、五年前から変わらない愛想笑いでスタッフルームの扉を押せば、途端に香り出す何とも言えない火薬の匂い。廊下よりかは明るいけどやっぱり暗い室内。そして積み上げられた段ボールに平然として座る人物が。
「あー、サキくんかぁおはよぉ」
「うんおはよう、店長」
我らが店長だったりする。
今日は全身黒で固めてるようだけど、コンビニのロゴ入りピンクエプロンで折角のスタイリッシュさが台無しになってる。それ言ったら殺されるけどね。

「それぇ、来週のシフトだからぁ。無くしたら殺すからねぇ」
「なくすわけないじゃん」
とか言ってみたけど、俺は来週のシフトに殺されるだろうなって思ったよ。




(なんで全部の日付に俺の名前があるんだろうね?)

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