私は普段からあんまり運がいい人間ではない。信じられないほど運が悪い、ということはないのだけれど、なんだかついてないなあと思うことがよくある程度の不運な人間だ。
魚を食べたら喉に骨を立てるし、すぐ口の中を噛んで口内炎はできるし、新しい着物を下ろしたら泥が跳ねたりこけたりですぐ汚れてしまうし…この間は結婚するはずだったお見合い相手が、実は良いとこのお嬢さんに手を出していてしかも孕ませてしまっていて大問題になって破談になった。まあ、全然好きでもない人だったのでむしろ破談になって少し嬉しかったくらいだ。(余計に両親に早く結婚してくれと小言を言われるはめになってしまったけど。)

驚くことにそんな私がある日を境に「最近ついてないなあ」と思うことがほとんど無くなった。
そもそも何故こんな話をしだしたかというと、今昼食に煮魚を食べていたのに全く喉に骨を立てず食べ終えることができたからだ。そういえばおろしたてのこの着物も全然汚す気配がないし、こけないし、えとせとら。なんの話だ?って感じかもしれないが、私にとっては一大事である。

「どうしたんです?そんな可愛らしい顔をして」
「か、かわ…?」
「貴女のことですよ」
「インカラマッさん、もしかして目悪いんですか?」
「いいえ?遠くのものでもハッキリと見えますよ」

それもこれも、このインカラマッさんという占い師に出会ってからだ。
縁談が破談になったことやついていないことを全て言い当て、なんかすごい人だなあと頭の悪い感想を覚えたことは記憶に新しい。インカラマッさんがなんだかんだと私に助言をしてくれて、それに従ってみたらなんだか物事がいい方向に進むのだ。占い師ってすごい。そのあともいろいろあって、何故だかよくわからないままここ数日行動を共にしている。

「そうだ、このお店が以前から気になってたんです!入りませんか?」
「えっここ待合茶屋ですよ」
「待合茶屋?ふつうの茶屋ではないんですか?」
「(詳しい説明するの恥ずかしいな)」
「この場所、良い運の流れが通っているんですよね」
「運の流れ?」
「はい、そういう場所からは良い運気を得られます」
「へえ〜よくわかんないけどすごいですねえ(インカラマッさんが言うならその通りなんだろうなあ)」
「貴女のためにもここで休憩していきませんか?」
「は〜い」

このあとめちゃくちゃおいしく頂かれる(かもしれない)(インカラマッちゃんの百合夢ください)(ください)