「おはようみょうじさん奇遇だね!」
「わっ!お、おはよう狛枝くん…今日はいい天気だね…」
「そうだね、採集もはかどりそうだ!」
「今日はどこに採集行くの?」
「うーん、集積回路が必要だった気がするから電気街かな?みょうじさんも一緒に行かない?」
「え、あ、うん!」

じゃあまたあとで、と言って彼女の元から離れひとつ大きなため息をつく。できるだけ明るい笑顔で挨拶をしたつもりだったんだけど、どうやら失敗に終わったみたいだ。やっぱりみょうじさんはボクを警戒しているらしい。
みょうじさんと何度か行動を共にしているうちに段々と避けられているような気がしていたんだけれど、視線を彷徨わせて言葉をつまらせるみょうじさんを見る限りそれは勘違いじゃなかったようで、とても残念だ。ボクみたいなゴミクズと一緒にいるのは苦痛だったんだろう。それでも、ボクを避けつつも誘えば一緒に行動してくれるみょうじさんはとっても優しいなあ。
彼女と出会ったのはつい先日だけれど、ボクはみょうじさんともっと仲良くなりたいと思っているんだ。ボクみたいなのと仲良くだなんてごめんだって思われているからこそ避けられるんだろうけれど、希望を求めることと同じくらいと言ってもおかしくないほど僕はみょうじさんを求めていて、こんな感情を僕が抱くなんてはじめてで……

「どうしたらいいのかな日向クン…」
「いや俺に聞かないでくれよ」
「だって日向クンには社交性があるじゃない!ボクは日向クンみたいに皆が喜びそうな話題なんて思いつかないし」
「だから俺に言われても…」
「それにボクはみょうじさんに嫌われてるみたいだから」
「……それは違うぞ狛枝」
「えっ?」

日向クンはやれやれといった感じでボクにみょうじさんの話をしてくれて、その話を聞いたボクは思わず走り出していた。待ち合わせの時間にはまだ早いけれど、日向クンの話が本当ならば、

「……っはぁ…みょうじ、さん…?」
「ええっ!?狛枝くん!?」
「ほんとに居た…」
「へ?」

安心感のような達成感のようなよくわからない気持ちに身体が包まれてどっと力が抜けるとみょうじさんが必死に支えてくれた。ボクを心配する言葉をかけてくれるみょうじさんからは普段感じていた警戒心のようなものが相変わらず伝わってくるけれど、日向クンの話を聞いた後では全く悲しくはなかった。…警戒しているだとか、避けてるだとか、そんなのじゃないって分かったからね。

「狛枝くん、採集行くのやめて休憩する…?」
「いや、全然大丈夫だよ!…そうだ、ちょっと早いけど二人で先に行こうよみょうじさん」
「二人で?」
「うん。ボクはみょうじさんともっと仲良くなりたいんだ!」
「……ええええっ!?」
「ねえ、みょうじさんは?」
「わ、私…」

やっぱり日向クンは凄いや。皆のことをよく分かってる。
ボクは彼女に避けられていると思っていたんだけれど、彼から見るとみょうじさんは恥ずかしがり屋で緊張していただけだったらしい。僕に話しかけてみようとするものの、考えれば考えるほど恥ずかしくなったようだ、と教えてくれた。きっと楽しみで待ちきれないだろうから早めに来てるんじゃないか、とも。ボクみたいなゴミじゃあ彼女のそんな気持ちに気付けなかったけれど、彼女もボクと同じ気持ちだったことがとても嬉しい。さっきまでは絶望に近かった気分は今では希望に変わって行ってるような気がするよ。


「私も、狛枝くんと仲良くなりたいな!」