可笑しくなるんだ、


「ねえカズ」

「はい?」

「あ、のさ、俺が何してるのか聞かないの?」

「聞いてほしいんですか」


意地悪なあなたは隣で俺に微笑んだ。


「……別に…」

「…那優」


あなたは気付いていない。俺がこんなにもあなたを思っていることを。
俺が今まで何をしていたかなんて、見る人が見ればすぐにわかる。
俺のはだけた制服のワイシャツから首筋に咲いた鬱血の跡が覗く。少し乱れた髪からまだ情欲に溺れた瞳から、それは窺えたはずなのに。


「…カズは、俺のこと抱ける?」

「…なぜそんなことを聞くのです」

「ちょっと、欲求不満だから、さ。カズのこと襲っちゃおうかなーなんて」

「冗談でしょう?」


冗談なんかじゃ、ないのに。


「カズは俺に欲情しないの?」

「……あなたは私の大切な親友ですから」


あなたは微笑んで俺の頭を優しく撫でた。
死にたいくらい悲しかった。どうでもいい男たちは俺に欲情して、どうでもいいのに愛してくれる。なのにどうして、たった一人の人から俺は愛されないの。


「カズは、どんな基準で相手を抱くの」

「私が抱くのは、どうでもいい人間か、もしくは私がこの世で一番愛した人間だけですよ」


それはつまり、俺はどうでもいい人間ではないけど、あなたの一番じゃあないってことで。


「……偽善者」

「ふふ、だからあなたは抱かないんです。私はあなたが大切だから、壊したくないんですよ」

「…別に、俺、カズになんか抱いてもらわなくても、男に困ってないから、もう、いい!」


大切だから、そう言われて嬉しい筈なのに。壊したくない、そう言われて嬉しい筈なのに。
結局俺は一番になれないんだって思うととても、辛いんだ。


「那優?」

「石橋センセーのとこ行ってくる」

「那優!」

「俺の体をどうしようがカズには関係ないだろッほっといてよ!」


目尻に溜まる熱いこれは、あなたの前では見せられないの。




「先生、」

「……で、俺に抱かれにきたのか?」

「うん」

「別にお前みたいな別嬪抱けるんなら、何も聞かねぇけどさ。とりあえず、そんな顔して泣くの止めろよ」

「…じゃあ先生が慰めて…」


石橋先生の赤い髪が、視界いっぱいに広がった。保健室のベッドの上に押し倒されて、腰が砕けそうになるくらいの甘い甘いキスをする。先生の青い目が俺を捕まえて離さなかった。


「那優」

「……っ!」

「忘れるまで、愛してやるよ」

「っ…せんせぇ…!」


耳元で囁かれて、ゾクゾクと何かが俺を支配する。止められない甘い快楽を求めて、俺は先生に身を預けた。
快楽に支配されて、いつもは何も考えられないのだけれど、今回は違った。
先生が低く甘い声で俺を呼ぶ度に、今は聞きたくもないあの人の声とだぶってしまうんだ。
耳を塞ぎたくて、でも名前を呼んでほしくて。そんな矛盾に支配されて、俺は涙が止まらなかった。



泣くなる想いに鳴き疲れ、支配と矛盾が交錯するの
(本当はあなたにだけ、触れてほしいの)

──────────

藤波 和仁←那優 耀泰+α
片想いシリアス。
一方通行万歳\(^o^)/
那優さんは物凄く泣かせたい衝動に駆られますね!一番涙が似合う男の娘だわ。

しかもやたらタイトル長いのでリンクは短めに。以下説明。
「泣くなる想いに鳴き疲れ」の泣くなるは、=無くなるであり、恋心の希望そのものです。つまりは失恋←
あとは恋に情事に鳴き(泣き)疲れた、という意味です。
「支配と矛盾が交錯する」とは、最後の文を表現しています。

と、タイトルを説明してみたが意味不明だな←


御一読感謝!





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