今日は私が生まれた日


「…………夜美?」

「あ、おはようございます和仁」


今日は、大好きなあなたに誰よりも早く会いたくて、生徒会室に誰よりも早く来るあなたを待ってみた。
そしたら驚いた顔をして私を見る。でもすぐに笑ってくれて、私におはようと言った。
そんな優しいあなたが大好きだから、だから、私は待ってみる。


「あの、和仁……」

「そう言えば夜美、動物は好きですか?例えばそう…猫とか」

「……へ?」

「猫とか犬とか、」

「……………好きですけど……」

「そうですか、良かった」

「……」


嬉しそうにそんな話をするあなたに、私は何も言えなくなった。
もしかして、今日が何の日だか知らない?今日は、私の誕生日なのに。あなたに一番に祝って欲しかったから、こんなに早くココに来たのに。
欲しくてたまらない言葉をいつまで経ってもくれない、そんなあなたに腹が立って。思わずふてくされた態度をとってしまった。


「ねぇ夜美」

「……なんですか」

「………何を怒っているんですか?」

「怒ってないです」

「怒ってますよ」

「怒ってないですってば!」

「………」

「あ、」


つい、声を荒げてしまった。あなたは呆気に取られて呆然としている。あなたの視線が痛い気がして、私は俯いた。
すると頭上から、クスクスと言った笑い声が聞こえてくる。ハッとなってあなたを見上げれば、あなたは声を殺して笑っていた。何なんだ、と苛立ちの言葉をぶつけようと口を開こうとすれば、それはあなたの唇によって阻止された。


「んぅ…ッ!?」

「……っ、夜美…聞き方を変えましょう。どうして、拗ねているんですか?」

「…な、なんで…」

「だって夜美、凄く分かりやすいですから」

「うっ……」


なんでもお見通しのあなたに、私はもう頭が上がらない。また俯いた私の腕を引っ張り、近くのソファーに押し倒したあなたの手は、大きくて温かかった。


「Happy birthday,夜美」

「…もっと早く言えばいいのに」

「あなたを少し苛めたくて、つい」

「意地悪…」


私の視界一杯に広がるあなたはいつも以上に格好良くて、ついつい見惚れてしまう。そんなあなたを見ているだけで、何故か今日だけは、我儘を言っても許される気がした。


「和仁……きす、して」

「それは、最後までシても良いということでしょうかね…?」

「あ、ん…っんぅ…」


あなたに触れられただけで、狂ってしまいそうなくらいに体が熱い。艶っぽい声で囁かれて、また熱い唇を重ねられて、私の体の奥がジンッと疼いた。


「ふ、ぁっ…ん…」

「…ッは…今日は普段以上に愛らしいですね…、酷く苛めたくなります」

「んあ…っ、いじわる…ぅあ…あっ…」

「制服は邪魔ですね……」


制服の上から私に触れていたあなたの手は、その言葉を合図にワイシャツの中に侵入した。少し冷えたあなたの手は、火照りきった私の体には刺激が強すぎて思わず私は悲鳴を上げる。
次から次に脱ぎ捨てられていく服を朧気に見つめ、私は次第に大きくなっていく快感の波に呑まれていった。


「あ…ひゃああ…っあん…!」

「もっと大きな声で鳴いてください…厭らしいあなたの鳴き声が外に響いてしまうくらいに」

「やだぁ…っんあ、ひゃん…っ…!」

「可愛いですよ、夜美…」

「ふぁっ…ひ、んぁあ…っ」


頭がぼうっとして、段々理性が崩れていくのがわかる。羞恥と、弱く断続的な快感にもどかしさを感じた。
あなたの手が私の下腹部を撫でる。それだけなのに私の体は敏感に反応した。次に訪れるだろう快感を想像するだけで、私の頭は可笑しくなりそう。


「んん…っあ…あん…!」

「泣いていますよ、そんなに気持ちいいんですか…?」

「きもち、い…もっと…っシて…あっあ…」

「…、淫乱ですねぇ…ねぇ夜美?」

「ちが…っんああ…!」

「何が違うんです?こんなに厭らしい顔をして、こんなに厭らしく腰を振って私を誘っているのに…?」


あなたの意地悪な言葉に、私は体が熱くなるのがわかった。私は、変態だ。苛められて感じるなんて、そう思うと余計に体は熱くなった。
もう自分の欲望は抑えきれなくて、辛くて苦しくて、私はあなたにすがり付く。


「あっあ…ふぁ…かず、ひとぉ…」

「なんですか?」

「早く…っ早くキて…っんあ、あ…っ」

「おやおや、自分で腰を振っておねだりなんて…あなたは我慢が出来ないんですか?仕方のない子ですね…」

「あっぁん…ごめ、なさ…んぁあ…!」


欲しかった快感が、一気に私の意識を支配した。一心不乱に互いを求め合って、私たちは馬鹿みたいに何度も何度も体を繋ぐ。行為に疲れてヘトヘトになる頃には、いつの間にか一限のチャイムがなってしまっていた。

声が枯れるまで喘いで、倦怠感と腰の痛みで起き上がれないでいる、私の隣に座るあなたが微笑む。私の髪を撫でて額に口付けたあなたは、呟くように言った。


「夜美」

「は、はい」

「右手を出してください」


言葉の意図がわからなかったが、私は腰をかばいながらも起き上がった。あなたを支えにして寄り掛かった私は、右手をあなたに差し出した。


「……」

「……和仁…これは、」

「いつか、左手にはめられるものを作りますから」

「……っ!」

「お互い社会人になったら、結婚しましょう」


冗談だと思った。右手の薬指にはめられたシルバーリングを見て、あなたの顔を見て、私は硬直する。嬉しさと、不安と、よくわからないもやもやが私の心に立ち込めた。


「…で、も…私は…男で」

「ええ、ですが同性同士で結婚できる国ならありますからね…嫌ですか?」


あなたの声が、言葉が、あなたの全てが、私の全てを狂わせるから。
だから、


「…嫌、じゃ…ない…私、和仁とずっと…一緒にいたい…!」

「私もです、夜美…」


嬉しすぎて泣いてしまった私を宥めるように、あなたはまた優しいキスをした。



happy-propose.
(今日は私が和仁の一番になった日)

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藤波 和仁×暁 夜美
激甘裏。
やはり瀧は言葉責めが大好きらしいですね。そして受けが淫乱化していくという……なんてこった/(^o^)\
リアタイでほのぼのするとか言ったけど全然ほのぼのしてないですサーセン…。

ていうか当初はプロポーズさせる気はなかったんですけど…あれ、我が子暴走←

ここまで読んで下さってありがとうございました!皆様に幸あれ!





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