どこまでが遊びで、どこからが本気なのか僕にはわからないから


「淫乱…ッ」

「はぁっあッんぅんあ…っ」

「ハッ、好すぎて答えられねぇか」


突然声を掛けられて、一発ヤらないかと言われたら普通の人間は断るだろう。だが僕は違った。正直な所溜まっていたのは確かだし、最近は夢見が悪くて誰かに慰めて欲しかったから。だから保健医の石橋先生と関係を持った。
ギシギシと軋む、生徒が何人も寝ていただろう保健室のベッドの上で、教師同士で体を重ねているなんて背徳的な行為に僕の体は熱くなる。そこに生徒が来てしまうかもしれないという後ろめたさや羞恥心が混ざり、よくわからないままに石橋先生を求めていた。


「あ…ッああんっ…ひうッ」

「結構可愛いな先生…それに慣れてる」

「ふぁ…っひああん…あ、石橋、せんせ…ッもっとぉ…!」

「分かってるよ…っ」


セックスでここまで求めたのは多分彼が初めてで。男とはもう数えきれないほどヤってきたけど、ここまで乱れたことなんてなかったのに。
石橋先生はおもむろに僕の両腕をネクタイでベッドの柵に縛り付けて、腰を打ち付ける。奥まで届いてイイ所を攻めるソレに僕は歓喜の声を上げた。


「ふ…ッんっああ…はあっん…!」

「っ…」

「あっせんせ…っ、も、イきそッ…ひぁあんっ」

「イけよッ…!」

「あ、あッひぁあ………!!」


その甘い背徳的行為は最後まで続いて、僕の理性を完全に崩壊させた。
情事後、少し失神していた僕が目を覚まし重い体を無理矢理持ち上げるとカーテンの向こうから声がする。


「小野先生、起きた?」

「え、あ、はい」

「珈琲淹れたんだけど飲むか?体キツかったら言えよ」

「、ありがとうございます」


体を重ねた後に、ここまで優しくされたことなんてあっただろうか。まだ残っている彼の温もりを、僕は直に感じたかった。
脱ぎ捨てられた服を着て、ふらふらと石橋先生の座っているソファに腰掛ければ、すぐ隣に座っている彼の整った顔がこちらを伺っていた。淹れ立ての珈琲を受け取り、猫舌なのでふうふう、と冷ましているとふいに彼が声を掛けてくる。


「……なあ」

「はい」

「この学園出身だったよな、小野先生って」

「そうですけど…それが何か…?」

「前にも、抱いたことある気がすんだけど。気のせい?」

「…さあ」


そう答えると、ふーん、というありきたりな答えが返ってきた。何だか納得のいかない今の発言は、一体どういう意味なのだろう。多分、抱かれたことはない…と思う。少なくとも、今の彼に抱かれたことはない。
まだ熱い珈琲をちびちび飲みながらチラッと石橋先生の方を見れば、長い睫毛が伏せられ一人物思いに耽っている。息を飲むほど綺麗だと思ったそれに、自分が何故かドキドキしているのに気付いた。


「……っ」

「俺の気のせいか、気分悪くしたら謝る」

「へ?え、あ、大丈夫です」

「……そろそろ次の授業始まるんじゃねぇの、行かなくていいのか?」

「あ!すいません、失礼します…珈琲ご馳走様でした」


彼の綺麗な目に見つめられて、思わず目を逸らした。おどおどしながら僕は保健室を飛び出す。
今までこんなこと無かったのに、どうして。


「なん、で」


こんなに悲しいの?



泪の意味を教えて
(悲しくて、可笑しくなりそうだった)

──────────

石橋 彰←小野 俊介
切ない話。どうやら瀧は一方通行が好きらしい。





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