大好きだから、不安になるの


「あの、和仁」

「どうしました夜美、どこか具合でも悪いんですか?」

「違うの、えっとね」


私達の通う学園はお金持ちばかりが集まっている。だから学園の施設には普通では考えられないようなものもある。その中の一つが、屋上にある温室。たくさんの植物が混在するそこには、生徒があまり近寄らない。
私達は今そこにいる。誰もいないし周囲の目は気にならない。だから心置きなく和仁と一緒にいられるし、元々花が好きな私の大切な場所。
和仁と手を繋いで歩いていたら、ふと、不安に駆られた。立ち止まり和仁を呼べば、私を労るように頬を撫でる。心地の良いそれは少しだけ、私の心を落ち着かせた。


「夜美?」

「あっ、えっとね、あの…」

「…大丈夫ですよ、なんでも言って下さい」


優しく微笑む大好きな和仁に、私は思わず繋いでいた手に力を込めた。一呼吸置いて、私は一番聞きたかった質問を和仁に投げ掛ける。


「その…和仁は、私のこと…好き、ですか…?」

「は?」

「だ、だからっ…私のこと好き…?」

「勿論」


今更何を言っているんですか、と言って私の額に和仁は口付けた。安心する筈なのに、私の不安はますます大きくなっていく。


「どれくらい、好きですか…?」

「……そうですね……」


そう一言呟いて考え込んでしまった和仁に、私は唇を噛む。不安に押し潰されそうになった時、突然和仁が私の顎を持ち上げ唇を押し当てた。何が起きたか分からなかった私は慌てて身を引こうとするけど、和仁にキツく抱き締められて動けない。


「っん…んん…ッ」

「…っ…」

「んぅ…っ!?」


苦しくてつい開いてしまった唇の隙間から、和仁の舌が割り込んで私の舌を絡めとる。まるで別の生き物になったかのような動きをするそれに翻弄され、私の視界は段々と霞み意識は朦朧としていった。
もう死んじゃうよ、そう心の中で叫んで力の入らない体で和仁を押せば、やっと和仁は唇を離す。


「ん、はあっ…はっ……」

「これぐらい好きですよ、夜美」

「これ、ぐらっ…て、どれくら…いっ…」


突然与えられた酸素に肺が上手くついていかない。私は息を荒げ、頬には生理的な涙が伝う。
そんな私を見て満足げに微笑み『これぐらい好き』だと言った和仁に、私は酸素が足りていない頭で疑問を感じる。何が、意味がわからない。懸命に問い掛ければ和仁はまた私を抱き締めた。


「貴方を殺せるくらい、です」

「っ…?」

「私のキスで、窒息しそうになったでしょう?」

「…和仁のばか…ッ」


恥ずかしくなって和仁の胸に顔を埋めれば、和仁はおかしそうに笑っていた。きつく抱き締められている体に感じるあなたの体温が、聞こえてくるあなたの胸の心地好い心音が、私を心から安堵させる。
ああ、そうか。私はこんなに愛されているんだ。


「…和仁、」

「はい」

「私も好き、誰よりも好き。ずっと一緒にいたいよ和仁…」

「…分かってますよ、愛してます夜美」


引き寄せられるように、また互いの唇が合わさった。

あなたの温もりを、願わくば永遠に感じていたい。




天使の憂鬱
(ただ、あなたにそう言ってもらえたことが嬉しかった)

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和仁×夜美
甘々。夜美は普段敬語を使いますが、慣れてくると少し抜けます←





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