愛してると言ってくれたあなたを、俺も愛そうと思ったんだ



「兄さん」

「…こんな遅くにどうしたんだ耀泰」


なかなか寝付けず目を覚ました俺は、兄さんの部屋から光が漏れているのに気が付いて声を掛けた。
何だか難しい本を読んでいたみたいで、分厚い本をバタンと閉じて振り返った。
振り返った兄さんは眼鏡を掛けていて久々に兄さんの眼鏡姿を見て少しドキッとしたのは秘密だ。


「えと…寝付けなくて」

「そうか、……そんな所に立ってないで中に入れ、体を冷やす」

「え、あっ…うん」


兄さんは優しく微笑んで、兄さんのベッドに腰掛けた俺に毛布を掛けてくれた。そして隣に腰掛ける兄さんに、俺の心臓は暴れ出す。


「顔が赤いな、寒いか?」

「え、そっそんなことないよ!」

「声が上擦ってるぞ」

「兄さんっ」


恥ずかしくて兄さんを見上げて睨み付ければ、すぐ近くに意地悪くクスクスと笑う格好いい彼の顔があって。
俺は慌てて顔を逸らした。


「耀泰」

「……なに」

「…こっちを向け」

「やだ」

「どうしてだ?」


テンポの良かった会話は俺が喉に詰まらせた言葉で途切れた。どうしてなんて、格好いいから直視出来ないなんて、そんなの言えるはず無いのに。
赤くなった顔を隠す為に俯いた俺の頬に、不意に兄さんの手が当てられた。その手は逞しくて、でも優しくて、思わず俺の眠気を誘った。


「耀泰……」

「兄さ、ん…」

「愛してる」


まるで磁石みたいに、俺の唇と兄さんのそれが引き寄せられて。
それで俺の心臓は壊れてしまいそうで、なのに馬鹿みたいに兄さんと舌を絡めて求めてる自分がいる。
恥ずかしくて可笑しくなりそうで。でも俺の体ははしたなく刺激を欲していた。


「んんっ…」

「っ…耀泰…!」

「…っだめ、兄さん…!」


ベッドに思い切り押し倒された俺は、慌てて兄さんの肩を押した。けれど兄さんの体はびくともしない。
それは多分、俺が本気で押していないというのもあるのだろうけど……だって兄さんにはもっと触れていてほしいから……俺が馬鹿正直にそんなこと言う訳ないから、それは兄さんもよく分かっているようで。


「本当は期待しているクセに、素直じゃないなお前は」

「あっあ…そ、なこと…っ」


焦らすように内股を撫でる兄さんのいやらしい手が俺を余計に興奮させた。無意識に腰を浮かせれば羞恥は一気に大きくなって、そんな恥ずかしい俺の姿を兄さんは満足げに見下ろしていた。


「…まだ触れてもいないのにこんなにして……そんなにいいか」

「やっはあ…ちが…!」

「嘘をつくな…」


まるで自分の声じゃないみたいな俺の喘ぎ声は真夜中の部屋に木霊した。
ほかに音が無いせいかそればっかりが耳に飛び込んできて、それに加えて兄さんの舌が俺の体を這う水音が俺の聴覚器官を犯していった。


「んっんんあ…あっ」

「淫乱だな耀泰」

「んあっ…言わな、でェ…っ!」


兄さんはいつも以上に意地悪で、見たことのない兄さんがそこにいた。そんな兄さんを見てまた興奮して熱くなった俺の体を、兄さんはゆっくり確実に犯していった。


「ふっ…あっんん…っ」

「……っ愛してる…」

「に、さ…んっあ…あああっ…!」


囁かれた甘い言葉に、止めどなく訪れる快感に、頭が真っ白になった。
まるで大きな波に飲まれたみたいな、受け止めきれないほどの大きすぎる快感に俺の体は悦びに震え、視界には火花が散った。
俺がイく直前、兄さんはもう一度こう言ったんだと思う。


「愛してる…」


ああ、俺は愛されてる。そう感じながら俺は意識を手放した。




愛の行為、愛の言葉

(お互いの愛を確かめ合った)

──────────

紅廉×耀泰
兄×弟、甘々裏。





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