女みたいだと言われることが嫌だった
「ちょっ…海理(カイリ)」
「良いだろ、今日俺疲れてんだよ穂波(ホナミ)。お前で癒して」
甘い言葉を言って俺を抱き締めるのは一応俺の恋人の、海理。女誑しで、不器用すぎる彼とどうして付き合ったのか今でも分からない。毎日のように求められているのに、好きだの愛してるだのと言われた試しがない。俺と彼の関係ってなに?
「っ…あ、やっ…止めて…ん、俺も疲れてるから…」
「ね、俺のために啼いて」
「あっ…ん、ああっ」
そんなこと考えてても、結局否定できないまま俺は流されてしまうんだ。
「ふっあ…あんっん!」
「っ穂波…」
「も、はぁっあ…イッ…あああっ…!」
「穂波……っ」
びくびくと体が達して、なかに感じたのは大好きな筈の彼の欲望。仕事と彼との情事で疲れきっていた俺の体は、もう限界だった。
「なあ、もう一回シよ?」
「も…、むりだよ…俺今日ホントに疲れて」
「……俺の言うこと聞けないんだ、穂波は」
「ち、が…そういう意味じゃ」
何でだろう、何でこんなになっちゃったんだろう。
無理矢理犯されて、泣いたって許してくれなかった大好きな筈の彼。嫌だと叫べば、彼は俺の腕をネクタイで縛り上げて俺を叩いた。何度も、何度も。
だけど俺は、
「穂波、君は俺無しじゃ生きていけない。そうだろ?」
「あっ、は、も、やだ…やめ、て」
「穂波、俺だけの穂波。俺を見て、名前を呼んで」
「ふ、ああっ、あ、や、だあ…」
「穂波っ…!」
あなたに、綺麗だと言われることが心地好かった。
あなたに、可愛いと言われることが生き甲斐だった。
「ごめ、ほなみ、許して」
「海理…?」
いつもは俺を殴って終わりの海理が、今日は違った。我に帰ったように俺に謝る彼に、俺は驚いた。
そして、ポツリ、ポツリと彼から漏れる言葉は俺が、一番聞きたかった言葉。
「怖いんだ、お前を亡くしてしまうのが」
「か、」
「ごめん、ごめん、穂波。好きだ、愛してる。だから、俺を見捨てないで」
「……うん」
まだ、俺は信じても良いんだよね。
肯定した俺に、彼は未だかつて俺が見たことのない涙を流した。
「すき、好きだよ海理」
「俺もだ、穂波。愛してる…」
馬鹿なヤツだと罵られてもいい。あなたがいてくれさえすれば、俺は生きていける。
傷だらけのマリア
(俺はきっと正しいんだと信じたかった)
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