声はかれても


「やだ、やめてよかいり…!」

「…っ俺に指図すんじゃねえ!お前は俺の言うことさえ聞いてりゃいいんだよ!」

「い…ッ…」


彼は最近よく、酒に溺れるようになった。口を開けば、俺への執着と束縛に満ちた刺々しい言葉が止めどなく溢れていて、俺は虚しくなる。
暴力も酷くなった。顔や腕にも痣を作るようになり、俺はまともに外を出歩くことが出来なくなって、俺はいつも悲しくなる。

バキッと痛々しい音が聞こえた。殴られた、そう理解するのに時間なんていらない。殴られた箇所が、強烈な痛みを伴って、焼けるように熱かった。


「か、いり…」

「俺のこと愛してるだろ?だったら、お前が俺を見捨てる訳ねぇよな?」

「いたい…よ…海り…」


涙も枯れてしまった。
そう思って虚ろに彼を見つめると、彼は泣いていた。何処か罪悪感に満ちた、それでいて発情した獣のような、そんなギラついた目をしている。

ああ、多分彼はきっと、愛情表現が人より下手なだけなんだ。


「かいり…好き」

「……穂、波?」

「抱いて、いいよ」

「っ」


俺を抱いた彼はいつも以上に優しくて、情熱的だった。
殴られた箇所は痛くて、行為のせいでジリジリと熱くなる体は悲鳴を上げる。喘ぎすぎて、喉だってかれて声が出ない。
でも、何かが満たされているのを感じて、俺は目蓋を閉じた。


「愛してる、穂波…」

「俺、も…」


心地のよい彼の声が、俺の心のかれていた何かを満たした気がした。




嗄れない愛

(たとえ俺の涙と声がかれても、貴方への愛はかれないから)



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