一番大嫌いなあなたの顔。


「穂波、今日一緒に歩いてた男誰?」

「え?高校の時の友達だよ。昨日言ったじゃない」

「…友達にしてはやけに親しそうだったけど」

「っあ…!」


今日、俺は高校時代の友人に誘われて外食に行った。勿論前以て海理には伝えていたし、海理もちゃんと承諾してくれたから心置無く楽しめた。…はずだったんだけど。
何故か目の前には不機嫌な海理の顔。無理矢理近くにあったソファに押し倒された俺は、どうしていいか分からずに海理を見つめる。


「か、海理」

「たまたま、俺も今日ダチとお前が行った店にいたんだ」

「えっ?」

「どうしてあいつと手なんて握ってた?なんであんなヤツがお前に触れるんだ!?」

「いっ…あ…!」


パンッという気持ちの良い音が部屋に響く。違うよ、違うよ海理。あの人にはもう綺麗な奥さんも可愛い子供だっているんだよ。なので男の俺なんかに好意を持つの。あの人は俺の相談を聞いてくれただけなんだよ。頑張って、て言ってくれただけなのに。なんでそんなこと言うの。
泣きながら海理を呼ぶけど、聞いてなんてくれなかった。何度も何度も俺を叩いた。そしてまた、


「お前は、俺の。誰にも渡したりなんかしない」

「や…っやめて海理…!」

「俺に口答えするな」

「やだぁっ…!」


ブチブチという音がして、俺の着ていたYシャツの釦が勢い良く弾け飛ぶ。海理は俺の衣服を引き剥がすと、まだならしてもいない中に無理矢理自身を捩じ込んだ。


「やぁああっ!いっ痛いッはや、抜いて…っあ!」

「お前が悪いんだよ穂波…ッ他の男なんかといちゃつくから…!」

「違っぁあ…ッやだぁあ…っ!!」


いつもとは違う、腹部に感じる強烈な痛みに俺は喉が潰れるくらいに叫んだ。どうやら海理が無理矢理押し込んだせいで切れたらしく、血で滑らせたそれは思いの外スムーズに俺の中に割り込んでくる。
痛みで可笑しくなりそうな俺を叩き起こし、海理は何度も腰を打ち付けた。


「はっやぁあ…んあ…ッ!」

「穂波…穂波っ…」

「も、やだっ…やめ、痛いよかい、りぃい…ッ!」

「俺はッ…悪くなんてないんだ…!全部お前のせいだ穂波…っ!!」

「ふぁああッ…ひんっ…やだぁあ、あっんあ…ッ!」


どんなに泣き叫んでも海理はやめてくれない。俺が何を言っても無駄なの?昔みたいな対等な関係には戻れないの?…嫌だ。今の関係が続いたら、今まで海理に捨てられてきた惨めな女たちのように俺もきっと海理にとってどうでも良い存在になってしまう。そんなの、嫌だ。


「嫌っやだぁ…ひああんッ…、やだよ海理ぃ…っ」

「……っ」

「ふ、あっんぁあああ……ッ!!」


海理に捨てられたら、俺はもうどうしようもないんだよ。
ビクビクと体が痙攣して、目の前には火花が散った。そのすぐ後に海理のそれが爆ぜる。中に感じた生温い海理の欲の塊は、俺の中に並々と注ぎ込まれた。
未だに朦朧とする視界をクリアにすることは出来ずに、俺は全身の、特に下腹部の痛みと疲労により意識を飛ばした。

どこかで、大好きな海理が俺を呼んでくれていることを祈りながら。




翔べない鶸が泣く

(例え羽をもがれたとしても、あなたの傍で囀ずりたい)



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