「トウコ?どうしたの?」
「あたしは忘れ物取りに来たんだけど……。Nは?」
「カラオケはあまり好きじゃないから、忘れ物したってトウヤに嘘ついて教室に帰って来ちゃった。」
「そう、なんだ。綺麗な声なのに勿体無いね。」

嘘、本当はあたしだけが聞けて嬉しい。


「今の曲は?」
「頭に自然にメロディーが浮かぶんだ。だから、即席の曲。」
「素敵なメロディーだった。」
「ありがとう。」



「……………。」
「……………。」

二人で窓に寄りかかって黙り込んでしまった。携帯をチラリと見たらベルからメールが来ていた。


『トウコー(;´ω`)
チェレンがいつもより
大人しいから寂しいよー;;
もしかしてNといたりする?』


(な、なんで解ったし!?)

とりあえず、携帯を買って早3年で培った早打ちで返事を返した。


『チェレンはそっとしておきなwww
Nとお喋り中なう^p^
もうちょいしたらそっち行くね』



送信して携帯を見たら、すぐに返信が来た。

『それならNといっぱい話しなよ!
あたしはチェレンとコンビニ行ってくるから
心配しないで(*´ω`*)ノ』



「ベルかい?」
「えっ……うん。コンビニ行くから学校で待っててって。」
「なら、僕もしばらく居るよ。」


どくん


「N。」
「うん?」


「なんで、あたしの気持ちに答えられないの。」


何故か言ってしまった。



「…………長くなるかもしれないけど。」
「大丈夫。」



「トウコは留年してた僕に学校に毎日行く理由をくれた。」

「………。」

「侵入禁止の屋上でサボってると迎えに来るのはトウコだった。使用禁止の階段をひょいひょい通って。最初はいつもみたいに僕の顔目当ての人だと思った。」

「………。」

「でもトウコ、君は違った。僕の顔色を見てへこへこしたりしなかった。僕が間違えた時は僕を怒ってくれたり、苦しい時は僕の代わりに泣いてくれたり、楽しい時は一緒に笑ってくれたりしてくれた。今まで僕が一人でしてきた事を君はいとも簡単に一緒にやってのけた。」

「………うん。」

「こんなに一緒に居ても苦痛にならない人間は初めてだと思った。ずっと一緒に居たいと思った。でも、それは恋愛感情じゃなかった。」
「………うん。」

「トウコが僕を好きなのは告白される前から知ってた。断ってトウコを傷つけたくなかった。トウコとは友達で居たかった。だから、あんな曖昧な言い方になってしまった。」


「N、もう良いよ。」
「トウコ……。」
「解ったよ。Nは私を大切にしてくれてたって事。」

だから、もう大丈夫だよ。Nは私の好きって気持ちに縛られなくて良いよ。と心の中で呟いた時、視界が歪み始めた。

「トウコ、泣かないで。トウコは何も悪くない。僕にも責任がある。」
「Nに悪い所なんてない。それに、なんか解んないけど勝手に涙が出ちゃっただけだから。」

「トウコ……。」
「あー、もう良いから!N帰っても良いよ。鼻水とか出ちゃうから汚い顔見せちゃ…」



「トウコ、泣かないで。」

視界が真っ暗になった。
そうか、あたし




Nに抱き締められてるんだ。




「トウコは僕に取って一番大切な女の子だよ。」
「な゛ら、付き合えよ゛ー。」

涙で少し声が震えてる。

「ごめん。」
「謝んな゛、好゛きだ馬鹿野郎。」
「僕も好きだよ。」
「う゛ぞづげー。」
「ありがとう、トウコ。」

そう言ってNは抱き締める手を緩めてあたしから離れた。


「え゛ぬ゛。」

やばい、泣きすぎて変な声しか出ない。落ち着け落ち着け。

「なあに。」
「好きじゃない子、を、抱き締めるのは、おかしいよ。」

普通の声出た。まだ、少し変だけど。

「ごめん。」
「ううん、いいの。なんか、最後にNの気持ちが聞けて良かった。」
「ごめ………。」
「Nが泣いてどうすんの!」

Nの頬には涙が伝っていた。

「あ、本当だ。僕泣いてる。」
「やっぱあたし達は仲良しなんだね。」
「うん。」

散々二人で泣いて、泣き止んだら二人で笑った。昇降口に移動する時も笑っていた。



「あー、笑った笑った。あ、そろそろ行かなきゃ。」
「僕もそろそろ行かなきゃな。」

お互い内ばきを靴箱に入れようとしていた。

「あ、あたしら卒業だから入れなくて良いじゃんね。」
「そうだったね。」

二人でくすくす笑いながら昇降口を出た。笑い終えると、Nがあたしを見つめていたから見つめ返した。

「それじゃあ、またね。」
「うん、いつかまた。」


手を小さく振りながら、お別れの言葉を言い終えるとNは振り向かずに校門を出ていった。



「あ。」


ふと、空を見上げたら青空が広がっていた。白い雲も浮かんでたけど、それはそれで良かった。またNの方に視線を戻したらNの姿は無かった。



「さよなら、好きな人。」



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学生時代って小さな事でもドラマになると思います。ちょい体験談を参考にしてたりしてなかったり。


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