※みんな高校生の現代パロです。
さくら サクラ 桜
なんて言葉が入ってる歌がよくあるけど、ぶっちゃけ卒業シーズンに桜が咲いてるなんてあまり見たこと無い。
「はい、コサージュ」
前の席の娘から卒業生用のコサージュがまわされた。ピンクの花がメインのコサージュだった。
(自分で着けろってか。)
まぁ、後輩が付けると移動とかめんどくさいだろしね。仕方ないか。
「トウコ〜!コサージュ上手く付けれないよぉ!」
「ベル、もう高校も卒業なんだから自分でしなよー。」
「そんなぁ〜。」
涙目でしょんぼりするベル。ため息をつきながらコサージュをベルの手から奪い、胸ポケットに安全ピンを刺す。
「……よしっ!はい、出来上がり!」
「ありがとう、トウコ。」
にぱっと笑うベルに笑い返すトウコ。
「トウコ、ベル。隣のクラスが移動したら体育館前廊下に移動だってよ。」
チェレンが2人に声をかける。隣のクラスにはトウヤが居る……あと、Nが。
Nは成績が良いくせに登校日数が足りなくて留年した生徒だった。Nは、あたしの好きな人。いや、好きだった人……かな?思いを伝えた事もあったし。
でも、
『僕は君が好きだ。でも、気持ちには答えられない。』
と言われた。そこで理由を聞けば良かったのかもしれないけど、これ以上ややこしくしたくないから聞かないでいた。そのまま仲良くしてたから、学年の大半は私達が付き合ってるもんだと思ってたらしい。
皆の言う通りだったら良かったのにね。あたしも内心Nの心変わりを願ってたから。
「……なんだけど。トウコ、聞いてる?」
「はいっ!?」
ふと気づくとベルの顔が目の前にあった。
「トウコったら!もう、高校も卒業なんだからしっかりしなさい!!」
あ、さっきのあたしの台詞取られた。まあ良いけどさ。
「……で、なんだっけ?」
「だから、今日の夕飯はクラス全員で食べ放題の店に行くんだって!」
「あぁ、はいはい。行きます行きます。チェレンも行く?」
「クラス全員、揃うなら行くよ。ベルは行くでしょ。」
それって遠回しにベルが行かなきゃ行かないって言ってるような……。
「はい、次のクラス移動して!」
そんなまったく緊張感の無い会話をしてたら並ぶ時間になっていた。
吹部の演奏とぱちぱち盛大な拍手の中入場して、
うろ覚えの校歌を歌って、
3年間が詰まってるらしい薄っぺらい卒業証書をもらって、
毎年似たような事を長々話す校長の話を聞いて、
知らないお偉いさんの話を聞いて、
答辞やらなんやら生徒の話を聞いて、
蛍のなんちゃら歌って、
ぱちぱち盛大な拍手と吹部の演奏の中で退場して、
卒業式が終わった。
卒業式の間、あたしは人間観察していた。ベルはうとうとしていて、チェレンは背筋を伸ばしたまま微動だにしない。隣のクラスながらトウヤも見えたから見てみたら周りの女の子から結構な数の手紙をまわされていた。おお、アイツも中々やるな。
Nはあたしの席から見えなかった。
何とか見ようと周りに迷惑をかけない程度に顔を動かしたけど、見えなかった。
そんな事をしてたから涙なんて全く出てこなかった。