もぐりもぐりと今日のおやつである焼き芋を食べていると、ナマエがじーっと俺を見ている事に気付いた。何か思い出そうとしているようだが、中々思い出せないらしい。そんな音が聞こえてくる。
一回気付いてしまうと、さっきまでは全然気にしていなかったことなのに途端に気になってきてしまう。

「あーもう、さっきからなんなんだよ!」
「気付かれてしまいましたか」
「気付いてたことに気付いてたろうがあんぽんたん!」

残った焼き芋をがつがつと食い収めて、ぐるりと身体を動かしてナマエに向き直る。

「どうしたんだよさっきからさぁ、視線が鬱陶しいのなんの」
「ううむ、私もすっきりしないので早く思い出したいのですが……」

俺が話しかけたからか、先程より遠慮のない強い視線をじじじじっと送ってきやがった。……。…………。何も喋らずにただ顔を見つめられる時間が続き、なんだか気恥ずかしくなる。

「そんな見んな馬鹿!!」

まだ!?思い出すのそんなにかかる!?おやつ食べる前からずっと考えてたよなお前!?そんなに考えるようなことぉ?!

「すみません、まだかかりそうです」

「おい!!うんこの形した葉っぱ見つけたぞ!!すげえうんこだぞ!!なあ!うんこ!!」
「でけえ声でうんこうんこうるせえ!!!うわめっちゃうんこ!!」

早々におやつを食い終えて外に出かけていた筈の伊之助がバーンと派手な音を立てて病室に戻ってきた。うんこ型の葉っぱを持って。蝶屋敷で働いてる女の子たちの耳に入ったらどうするつもりだ此奴!?
ナマエこのうんこ野郎を叱ってくれお前の役目だ!と隣を見遣ると、ナマエは合点がいったように手を合わせていた。

「ああ、信号か」
「は?」
「え?」
「いえこちらの話です。ところでお二人さん、なほちゃんが引いた目で見ていますよ」
「アッ」

伊之助が開けっ放しにしていた扉に隠れて俺たちを覗いていたなほちゃんに何でもないよぉ〜〜〜!伊之助の所為だよぉ〜〜〜!!と伝えるのに必死で、信号ってなんだよって結局聞けなかった。……信号ってなんだよ!?



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