「え、オールマイトが雄英に?」
「ああ、俺たちが出席でき……しなかった入学式で挨拶してたらしくて、俺たち以外は全員知ってるって」

私の席は名簿順で運良く一番後ろになった。右隣の砂藤からクラスメイトたちが浮足立っている理由を教えてもらい、ははーんと頷く。

「いよいよオールマイトも引退を考慮して後進の育成を考えるお年になったというわけですね」

私の声が聞こえた周辺のクラスメイトの動きが止まり、その内の一人の峰田が嫌そうに振り返った。

「おめぇよ〜、あのオールマイトに教われるのを純粋に喜んでんのに水ぶっかけんなよぉ!」
「それは失敬。まあ引退問題は置いておいて、私たち良いタイミングで入学できましたね」
「ほんとそれな!?上級生は一、二年だけだし運が良かった」

程々にクラスメイトたちと喋りながら雄英高校二日目は過ぎていく。まだ授業が本格化していない今の内に校舎を歩き回り、広大な間取りに慣れていった。
雄英に入学して一番嬉しかったのは食堂の昼ご飯。安い、美味い、速い!最高か……?食堂使用と自作弁当の比率を変動させたくらいである。ありがとう雄英、成長期男子の味方。

午前は中学から引き続き必修科目で、午後はヒーロー基礎学。そこでついにオールマイトの姿を拝見した。

「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!!」

オールマイトをナマで見かけるのはこれが初めてではなく、小さい頃の暴走期に逃亡中のヴィランによって私が人質にされてしまった時にオールマイトによって助けられたことがある。十年ほど前の話だ。今と昔とノリが全く変わらないのも、彼の推定年齢を考えると、ある意味凄いなぁとしみじみ。

「早速だが今日はコレ!!戦闘訓練!!!」

声が無駄にでかいなとか考えてませんよ。

「そしてそいつに伴って……こちら!!!入学前に送ってもらった『個性届』と『要望』に沿ってあつらえた……戦闘服コスチューム!!!」

自分の出席番号が表記された鞄を取り出し、中身を確認する。
もしも能力の操作が覚束なくなった際に使う板状の加熱&冷却機能が付いた、私専用のコスチューム。

「お、ちゃんと設計書通りになってますね」

個性の都合上耐熱と耐寒は必須。コスチュームの生地は勿論、指を保護する手袋、髪を隠すフードはそう簡単にお亡くなりになられないよう、きっちりと要望を出しておいた。
確認の為に火を出してコスチュームをそれぞれ炙っていく作業を繰り返しながら着替えていると、皆さんあっという間にグラウンドへ向かって行き、なんと緑谷と二人きりになる。

「わあ、轟くんカッコいいね!」
「ありがとうございます」

褒めてくれるのは嬉しい。しかし彼の頭にあるツンツン二本……もしかしてオールマイトを意識してたりするのだろうか?私も彼のコスチュームに何かしらの返事をしておきたいが……あの頭しか目に入らない。

「も、もしかして僕の似合ってない……?」
「いえ、貴方も格好いいですよ」
「ほんと!?」

わあ輝かんばかりの笑顔。無難な返事になってしまったが、下手に追及するよりかはマシである。
二人でグラウンド・βに向かうと、私たちがまた最後だったようで直ぐに戦闘訓練の説明が始まった。

「監禁・軟禁・裏商売……このヒーロー飽和社会ゲフン、真に賢しいヴィランは屋内にひそむ!!君らにはこれから『ヴィラン組』と『ヒーロー組』に分かれて、2対2の屋内戦を行ってもらう!!」

チームを決めるのと対戦相手はそれぞれクジで決めるらしい。箱に手を突っ込み、中に入っているボールを掴んで取り出す。Bと書かれていた。

「Bの人いらっしゃいます?」

まだ引かれていないかもしれないがとりあえず既に引き済みの人達に声をかけると、私よりも大柄の男子がBのボールを持った手をあげた。名前は確か、障子……目蔵でしたっけ。

「よろしくお願いします」
「……よろしく」

障子は見るからに複数ある腕なのか触手なのか……とにかくそれが個性だと分かるが、どういう風に扱って戦うのだろうか。眺めて観察したい所ですけど私たちの立場が何れかで立ち振る舞いも変わりますし、どうでしょう。

「続いて最初の対戦相手はこいつらだ!!Aコンビが『ヒーロー』!!Dコンビが『ヴィラン』だ!!」

呼ばれた2チームがそれぞれ前に出る。なんとAに緑谷、Bに爆豪だ。因縁めいたものを感じる。

「あの二人幼馴染なんですって、クジなのに凄いですねえ」
「ほう……互いに手の内は知ってる中でどう戦うことになるか……」

爆豪は緑谷を無個性だと思っていたらしいので手の内は知らないと思うが、そこは黙っておく。


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