前半ヒマワリ時代 ○チューペット 「雪成今日のおやつもらってきたぞ、ポッキンアイスだ」 ポキンと折ろうとするが、伸びてうまく折れない。 「ぐっ……!」 反対側に折るが更にポリエチレンが伸びてしまうだけだった。 「兄さん」 「んっ?」 雪成が捻じる動作をしてみせると、一馬はそれを真似してチューペットをぐるぐると捻る。 「出来た……けど入口が小さくて食べづらいな……悪い」 「噛めば出てくるじゃん」 ○撃破、チューペット 「聞け雪成、俺はこのアイスのヒッショーホウを生み出した!」 「アイスに必勝法とかあるの?」 「この部分とこの部分を持って、そしてあまり力を入れすぎず……こうだ!」 ポキン。良い音を立ててチューペットが二つに割れた。 「こんなもんだ」 どや。 「兄さんは凄いなぁ」 「ふっふっふ」 適当に褒めながら食べる雪成だったが、一馬はいたって満足そうだった。 ○新たなる敵、ダブルソーダ 「最近はこんな商品が出てるんだよな、食べたことある?」 「ダブルソーダ?いや、ないな」 手渡された袋詰めのアイスを興味深そうに見つめる一馬。 「最近はアイスも色々種類増えてるし兄さんもたまには駄菓子屋寄ってみたら」 「そうだな、仕事が忙しいから最近はめっきり……お、これも折るタイプなのか」 袋から取り出すと、真ん中部分に溝が出来ており、持ち手の棒が二つ付いているアイスだった。いそいそとポキン。 「……」 四分の三が片方に持っていかれ、もう片方には四分の一しか残らなかった。 「どんまい」 呆然とする一馬から少ない方を奪い取り、さくさくとあっという間に食べ終える雪成。 「ゆ、雪成、」 「要らん。兄さん食べろよ、暑いでしょ」 残ったアイスを差し出そうとするがあっさり拒否されて、上手く折れなかった不甲斐無さと共にダブルソーダを完食した。 ○決着、ダブルソーダ 親の仇を見るような目で手元のダブルソーダを睨みつける一馬。 「兄さん何してんの?」 「雪成……俺はあの一年前の時以来、アイスをきちんと折れる兄に成るべく修行を重ねた……」 「いや、何してんの?」 弟からの冷たい視線もなんのその、兄は袋から取り出す。 「修行は過酷だった……錦の腹は連日連夜下り、俺の両手の指先には棒だこができた……」 「マジで何してんの?自分で食えや、てかペンだこみたいなニュアンスで言うなよ」 「夏はともかく冬はきつい、そもそも味に飽きたと錦は弱音を吐く始末……」 「だから自分で食えよ錦も素直に食うなや」 「下痢止めを服用し始めた錦に柏木さんが気付いた……」 「あ、柏木さんが止めてくれるか?」 「冷麺にかけるトッピングの買い出しに行く代わりに食べてやろうと取引を持ちかけてきた……」 「柏木さん……」 「こうしてトイレと親友になった二人の犠牲を背負い……時は満ちた」 そして一馬はついに、昨夜から溜めていた気合を解き放った。 「今こそ未熟な過去を克服する時だッ!――ハァァッ!!」 ポキン――何一つ雑音の混ざっていない、綺麗な音が出た。 「はぁ、はぁ……どうだ雪成ッ……俺はやったぞ!」 どや。 「兄さんは凄いなぁ」 天然な兄への突っ込みを諦め、適当に褒めながら食べる雪成だった。 戻る |