俺たちはそれぞれ一族の者に気付かれぬようにしながら、定期的に集って共に精進を続けた。


「マダラ、写輪眼の調子はどうだ?」
「フッ――聞いて驚け、一族の皆との稽古で勾玉模様が一つ増えた」
「オレも新技のアイデアを持ってきたぞ!名付けて体術超奥義水遁幻術返し苦無三段崩しの術だ!一緒に身に付けよう!!」
「「却下」」
「なんぞ!?」
「いやあ……だって、なあ?」
「無駄に長ェし途中で噛むだろ。そもそも!相変わらずイメージできねえんだよ馬鹿」
「すっっごい強い技なのに……」


時には新しい術の開発を行い、


「おいユキナリ!お前体術だなんだと言いながらオレ等の技を直で受けてばっかで技の一つも使わねえじゃねえか!ただの我慢強さだろそれ!」
「……率直に言わせてもらうが、単純な身体能力だけの組手だとお前らの攻撃ってたいして痛くねえんだよな。だからつい相手の攻めを無視して捕獲しにかかるというか……」
「ううむ、オレたちはまだ成長期だからなぁ……どうしても小さいし軽い。肉をたらふく食えばいいのか?」
「肉だけじゃ背が伸びないって父上が言ってた、野菜もだ」
「両親からの遺伝も重要だが、俺たちが今できることは食事と運動と睡眠に気を遣うことくらいだな」
「それならオレが一番でっかくなるな!森の千手だし!」
「オレの一族の中には二メートルぎりぎりの大男がいるんだぞ、オレのが可能性高いな」
「うちははどっちかというとヒョロガリ……」
「ンだとゴラァ!!」


時には身体の成長に苦心し、


「おっしゃあ!全部ド真ん中に当たったオレの勝ちぞ!」
「チッ、木の裏の的だけちっとばかしズレちまったか」
「手裏剣なら出来るんだが……苦無の扱いももっと慣れとかないと」
「ユキナリは苦無を打つ時に重心がやや右にブレてるから、次はそこを意識してやってみればいいんじゃないか?マダラは突発的に吹いた向かい風で苦無の一つだけスピードが緩んでズレたってところだな」
「そうだな、もう一回やってみる」
「風の流れを読んで……うし」


時には難点を指摘し合い、


「きのこが美味い」
「いや、寿司だ。いなり寿司が至高」
「もしやマダラはきのこの雑炊を食べたことが無いのか!?」
「言葉を返すがテメーの方こそ寿司は口にしたことねーのか」
「俺干物派」
「よォーしユキナリも海の幸派閥だ!二対一だぜ柱間ァァ!!」
「山の幸も美味いぞ!?なぜ分からないんだ?!」
「……なあマダラ、一つ言っておくと、稲荷寿司に魚介類は使われて無いから海の幸じゃないぜ?」
「――――えっ?」


時には意見の相違で喧嘩をし、




そして俺たちが出会ってから一年と少しの月日が流れた。


「秘密の密会も今日で終いだな」

月に幾度も集落から姿を消し、こっそりと尾けられた追跡も振り切って、そうして続けてきたこの集会。直接問い質されても修行をしているだけだと誤魔化して今まで継続していたものの、これ以上はもう無理だと俺たちは判断した。このままではそれこそ幹部クラスが出張ってくるだろう。流石に限界だ。
マダラの発言に俺と柱間が頷く。

「この先、オレ達は何度も戦場で殺し合うことになるだろう。特に、オレとマダラはな……」

柱間が言う。

「長になるまでの過程で、互いの一族を殺すこともある」

俺が言う。

「だがそれでもオレ達はやるしかない。オレ達の夢を叶えるにはこれが一番の最短距離」

マダラが言う。

「これが一族同士の戦いを無くす一番の近道だ」
「俺たちが長になりそれぞれの一族で同盟を結ぶ。そうすれば」
「オレ達の夢は現実のものになる!」

柱間の希望に溢れた声が辺りに響く。

俺、柱間、マダラの三人が立つ崖。此処からは広範たる森林が見渡せる。
この眼下に広がる土地に俺たちの集落を作るのだと誓い合った。
殺し殺されが常識の忍世界に改革を起こし、子供が伸び伸びと成長出来る集落を。
一族同士が手を取り合える、既存の枠組みを取り払った集落を。

この世に生きる多数が鼻で笑い、少数が夢が叶えば良いと世を儚む。
そんな寝言のような夢を俺たちは時を同じくして共に歩んで行く。


「絶対にやり遂げるぞ!マダラ、ユキナリ!」

「途中でくたばるんじゃねェぞ、その程度の奴にオレの腸を見せた覚えはねえ!」

「誰にナマ言ってんだ、マダラこそやっぱ弟くんに長の座を奪られましたなんて言わねえだろうな?」

「ハンッ、ユキナリは長になるってだけじゃなく宗家と分家の垣根も無くすって宣ってたが、お手並み拝見といこうか」

「扉間もイズナも長の座に成り得る器で、ユキナリの目的も困難だ。しかし諦めず、突き進もう!」


「「――おう!!」」




俺たちは、目をあけて同じ夢を見た。


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