「よう、柱間。今回はお前が一番か」
「だいたいオレが最後だからな、気合をいれてみた!アッハッハ!」

川原に辿り着いたユキナリを迎えた柱間が呵呵とばかり笑う。二番目にやってきた相手がユキナリであることを確認すると、ニヤリと笑って足元に幾つも転がる石の中から薄く平べったい水平上の物を拾いあげ、ユキナリに投げ渡す。

「?」
「ユキナリは知らねえよな。オレがマダラと初めて会った時、あいつは水切りをしてたんだ。向こう岸に届くかをしながら……」
「ほお、願掛けね」
「最初はオレが届いた。マダラと再会した二回目の時にあいつも届かせた」
「……なぁるほど」

柱間は川の向こう側を顎でしゃくった。意図を理解したユキナリは右手の石を一回、二回と宙に放る。普段は賑やかで騒がしい柱間が珍しくもただ静かに見つめる中で、ユキナリは幾度か脳内で水切りのシミュレートを行う。目を閉じて、ゆっくりと深呼吸。瞼を開ける。

(――お前らに出来て俺に出来ないわけがない!)

不敵な笑みを浮かべ、腰を捻じり手首のスナップを利かせながら指の先まで意識を集中させ薄石を打つ。バシャバシャと水の上を切りながら前へと進んでいき、四回の反動の末、薄石は向こう岸に届いた。
薄石の結果を見届けた柱間とユキナリは同時に向き合い、互いに口角をあげながら頷きを一つ。

「ユキナリはなにか願掛けしたか?」
「俺はそーゆーのやらねえんだ、それよりも練習修行実行だから」
「わはは!そうかそうか!マダラはロマンチストな所あるしなー!」

「おい、オレがなんだって?」

眉間に皺を寄せ柱間を睨みつつ到着したマダラ。柱間は反射的に首を横に動かしなんでもないと誤魔化すが、マダラに話を打ち切るつもりはないようで更に追及して胸倉を掴んだ。内心では柱間の発言に同意していたユキナリはしれっと半歩下がり、知らん顔で笑っていた。

「別にロマンチストは悪い意味じゃないぞ!」
「願掛けなんて女っぽいとか思ってんだろ、どうせ!」

暫し二人の掛け合いを笑って見守っていたユキナリだったが、不意に表情を引っ込め、眇めながらマダラがやってきた方向に首を動かす。
瞬きの合間にユキナリの赤色の瞳が薄紫かかった白色へと描き変わった。

「ユキナリ、どうした」

ユキナリの急変に気付いた柱間とマダラは取っ組み合いを止めてユキナリが見つめる先に視線を投げる。一見すると何の異変も見られないが、眺望で白眼の右に出るものはない。二人は黙ってユキナリの返事を待った。

「マダラと同じ服、似た顔、似たチャクラ性質をもった年下の子供がこっちに向かってる、心当たりは?」
「――そりゃ恐らくイズナだ!オレの後をつけてきたのか!?」
「ユキナリ、他に人はいるか!」
「感知できる範囲では一人だけだ」
「そうか……子供一人ならまだ怪しまれてるだけだな」
「イズナは感知タイプじゃない、今から超特急で逃げれば間に合う!」
「それなら俺が先導する、行くぞ!」

マダラを追跡するイズナの足取りを白眼で把握し、ユキナリは安全だと思われる場所まで二人を避難させる。
普段の修行に比べれば移動距離は大したことはないが一族の誰にも話していない秘密の集会が漏れる危険が孕んでいた為、逃げ切ったことを確信した三人はそれぞれ肩で息をしていた。

「あ゛ー……危なかったなー」
「ああ……望遠に長けた白眼がなかったら、イズナを通じて父上に報告がいってた……」
「マジでやばかったな、気付いて良かった」

三人を襲った危機に、多少緩んでいた気が引き締まった。マダラは柱間とユキナリに頭を下げる。

「悪かった、次からは此処に来るまでのルートを変えて撒けるようにしておく」
「バレるわけにはいかねーもんな。オレの場合弟が感知タイプなんだ、気を付けねえと」
「これも良い修行だって思おう、これからは俺の白眼で周辺に人影がないかちょくちょく確認しとくよ」

危うかったのは事実であるものの、今回の危険を機に三人は各々の一族に集会の存在を悟られぬべく細心の警戒を払うようになり、寧ろ本件のお蔭でその後一年もの間、互いの一族に気付かれることなく秘密集会を続けることが出来るようになったのであった。


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