此処最近、同い年くらいに見える二人の子供と知り合った。 それは殆ど行ったことのない地域で修行をしていた時のこと。本来外で使用するのは禁じられているのだが、チャクラ感知と白眼の把握距離を少しでも伸ばす為に見知らぬ場所でやりたかったのだ。日向の集落を中心に遠見をしていては同じ景色ばかりで悪い意味で慣れが出てしまう。 そんなわけで何時もは行かない場所に出歩いて、周囲を最大限警戒しながら白眼を発動したら遠くにあの二人を発見し、明らかにチャクラの質が異なる他部族であるのに仲良く修行するだけに飽き足らず、今の忍界をどうやって変革していこうか等と話し合っていた。この時代の常識では考えられないような論議をあんなに真面目な表情で。読唇術でその会話内容に気付いた俺はいてもたってもいられなくなった。気が逸った状態で二人の間に突撃して、そこからちょっとばかし騒ぎがありつつも俺たちは同士になったというわけである。 そーっと足音を殺し、マダラが川を覗き込みながら何かを行っているのを背後から様子見する。覗き込んでいる範囲の水面にはゴロゴロと石が転がっているだけで魚はいない。 「何してんの?」 「うお!?ユキナリか……ビックリさせやがって、またお前の気配分からなかった」 「お前が真剣だったからだろ」 あんなに集中して何を見てたんだか。 「で、何してんだよ」 「別に目にゴミが入ったから洗ってただけだ。あと、他に何か異物が入ってないか確かめて」 「ああ、うちはだからか。納得」 俺ら日向一族と同じく三大瞳術を用いるうちは一族生まれのマダラは目にとても気を遣う。うちは一族の写輪眼≠ヘ聞き慣れた名称だ。瞳術だの眼だのと言うだけあり実際の目を使うわけで、媒体である両目が傷ついたりしないように当然日常生活でも戦場でも配慮しなければならない。 「オメーも日向だろうが!もっと自分の目を労われや!」 「人体はそんなにヤワじゃねえし、今朝落花生食った」 「それは最低ラインだろ、目のマッサージとか眼球をぐるぐる回して体操するとか!お前してんのか!」 「え〜〜〜それは気が向いた時とか、時々稀にそこそこやってる」 「毎日やれや!!てかハッキリ言えよ結局どれぐらいやってんだよ!」 三日に一回ぐらいはやってるよ、眼球体操。ていうかマダラお前そんなこと言ってるけどさぁ。 「マダラ、前髪は切らねえの?」 「は?」 「微妙に目にかかってんじゃん?それはどういう判定?」 それくらいの長さだと目に入る事も有り得るんだが。柱間くらいの長さの方がいいよな。 「こ、これは……」 「これは?」 「そ!う、だな!伸びたからそろそろ切らねえとな!」 なんでそんな動揺してんだよ。 「……その方が格好良く見えるからとか?」 「!!ばっばばばバカヤロー!んなチャチなことで伸ばすわけねーだろ!オレたちは目が命と言っても過言じゃねえんだぞ!!」 「かっこよく見せたかったんだな」 「だから違うっつってんだろアホユキナリ!!」 「いや、俺は否定しないぞマダラ。この年頃の男にはよくある話だからな。ほんのりと影があると何故か格好良く見える気がする。そしてその類の格好良さに心が惹かれてしまう……そういう傾向なんだ」 「エッ……そ、そうなの?」 「どうやらそうらしい」 神妙な顔を作って頷けばマダラは生唾を飲み込んだ。前髪の一部を指で摘み、そこでハッとしたような表情になる。 「そういやぁオレがもっとガキの頃は直ぐに鋏で切るように注意されてたが最近は言われた覚えがない……!まさか!!」 信じられないと言いたげなマダラと視線がかち合う。同意を示して頷いた。 「皆そういう年頃だったんだ」 「父上たちも?!」 「ついでに言うと、大人になってもその感覚が消えることはない。無くなったと思っても、それは錯覚だ。男は幾つになってもそういうもんで……大人はそれを隠すのが上手いだけなんだよ」 「そうだったのか……!」 いや知らんけど。うちはの中二事情俺はまったく知らねえけど。マダラ、俺は心配だ……何故そんなに他人の言う事を信用するんだ…… 「お、なんだオレが最後か!待たせたな!」 「来たか柱間」 「柱間……」 「どうしたマダラ?」 一番最後に川原にやってきた柱間に深刻な顔をしたマダラが口を開く。 「お前の一族の大人たちは……滅多に前髪を伸ばしていない気がするんだが、なぜだ?」 「え??なんで前髪?」 「柱間、ここは一つ、何も聞かずに答えてやってくれないか」 「ええっ?まあ良いけどよ、オレも理由なんか知らないぞ?……確かにすげえ短いか額に何かしら巻いて前髪を後ろに流してる奴ばっかだな」 「ユキナリ、これは……」 「隠すのが上手いってことだろう。伸ばしたいが今更そんなことは言えない、だから極端に切ってしまう。額に巻いて前髪の存在を誤魔化す――つまりそういうことさ」 「なるほど……!!」 「なにが?」 マダラ、俺は本当に心配だぞ。 戻る |