とある川原にて、同世代の少年三人が組手を交わしていた。

一人が片割れの一人に足払いをかけ、ノーマークになっている残りの片割れは足払いを仕掛けた一人の鳩尾に向けて突きを繰り出す。しかしそれを予測していた一人はそれを避け、真横に通り過ぎた手首を捕えるや否やぐるりと一回り回転し、その勢いで相手を横様に払って倒す。足払いによって体勢を崩していた一人はこの間に相手の背後に回り込み、脇腹に蹴りを入れた。それはそのまま相手の脇腹にめり込むが、同時にがしりと片足を掴まえられてしまう。咄嗟に一人は自由な方の片足で砂利を蹴り上げて宙に飛んだ。そして鋭いスピードを保ったまま、相手の首に向けて回し蹴りが入る。そして、その片足すらも捕えられた。

「げっ」

思わず声が漏れる。
一人はしくじりに顔を歪ませ、一人はにやりと口角をあげた。
手中に収めた両足首を脇の下に挟み込んで抱え上げ、己を軸に幾度も回転しながら相手を振り回し、平衡感覚を失わせた上で、

「そぉい!!」
「わぶ!」

掛け声と一緒に放り投げられた。
最後まで砂利の上に立ち続けた一人の勝ち誇った顔が、砂利に背を付けた二人を見下ろす。

「これで俺の連続連勝だな、体術で日向に敵うと思うなよ!」
「クッソォ!もう一度だ!」
「あ、待てマダラ!反省点を振り返って見つめ直そう、一回休憩挟もうぜ」
「む……そうだな、休むか」

五回続けて行われた一対一対一の三人組手が終わり、三人は各々の竹水筒を手にして水分を補給する。
得意げに胸を張る一人に対して、一人はきつく睨みつけ、一人は次は勝つと意気込んだ。

悔しげに枝で地面にがりがりと荒っぽく思いつく限りの改善点を書きあげている少年――うちはマダラ。
先程の組手の動きを腕で軽く再現しながらどう対処すべきだったか考えている少年――千手柱間。
ブリッジよりも更に深く柔らかく身体を曲げ中国雑技団に入れそうな体勢の少年――日向ユキナリ。

この三人の中に一人として同じ一族のものはいない。
しかし、三人は互いの姓を知った上で武を競い、鍛錬を重ねている。
この戦国時代でそのような奇跡が叶ったのは、それは一重に、三人に同じ夢が宿っていたからだろう。

『子供が殺し合わなくともいい。
 強く大きくなる為の学校がある。
 個人の能力と力に合わせて忍務を選べる。
 依頼レベルを振り分ける上役のある。

 ――子供を激しい戦地に送ることのない、そんな集落を、忍の世を、作りあげる』

唯一残った弟を。
これから生まれてくる家族を。
背中を合わせる仲間を。

大切な存在が命を散らすことのない……そのような甘っちょろい夢を、共に見つめていたのだ。


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