読書をしている途中、くいっと服を引っ張られる感覚があった。
目線を右下に移動させると安室透という人物にそっくりな小さいぬいぐるみがぴょんぴょんと跳ねて自己主張をしている。
「ぬいぐるみ君」
「ぬい〜!」
このぬいぐるみを初めて発見した時は、若返る薬が存在するのだからもしかするとぬいぐるみになってしまう薬も存在するのかもしれないと同一人物説が過ったのだが、今となってはそれは絶対にない分かる。俺と目が合う(?)だけでこんなにも嬉しそうに笑う(?)のだから、他ぬいの空似なのだろう。
「ぬい、ぬいぬぬいっぬい!」
「くすぐったいぞ、ぬいぐるみ君」
「ぬ?」
掌に載せてみれば楽しそうに右往左往し、俺に語りかけてくるぬいぐるみ君。
ちょっとばかりこそばゆい。それを伝えてみれば不思議そうに首(?)を傾げた。頭の比率が大きいからたったそれだけでバランスが崩れて倒れそうになるので見ていて危なっかしい。
「君は……愛らしいな」
「ぬっ!?ぬ……ぬぬ、ぬい」
恥ずかしそうに照れる(?)ぬいぐるみ君を見て、改めてぬいぐるみ君の可愛らしさが襲い掛かってくるのだった。