星ヨ降レ |
(妾を童扱いするなんて) あの男は星を降らす気はないのか。野薊は呆れ返る。 返事を認(したた)めようかとも悩んだが、それも馬鹿らしいと放った。 「……馬鹿にもほどがありますわ」 少し、少し、ほんの少し。星が降るのが遅くなればいいと願う妾がいて、吉継の帰りが早くなればいいのにと思う妾がいた。 (まるで夫を待つ妻のようではないの) 単衣で口元を隠して、手紙をいそいそとしまう。土産の書に手を掛けると、手元が白く濁った。 「……まだ何か用なのかしら?煙々羅?」 「いやごめん、忘れてた」 声だけ聞こえて、野薊の手に小さな巾着袋が乗せられた。 「今度こそもう来ないから」 消えた煙々羅の気配はもうどこにもない。ただ余韻のように香りが漂う。 匂い袋というやつか。 (……これは、気まぐれですわ) これから認めるのはお礼というやつだ。別に他の気持ちなんてない。恋心とか、そんなものは決して。 幸 を 得 ず ・ 星 よ 降 れ ! 牽 牛 織 女 を 出 逢 わ す た め に (煙々羅!これを蝶の君に渡しなさい!一刻以内に!) (はぁっ!?ちょっ、私、今伊予から大阪まで来たばかりなんだよ!?) (黙りなさいな!鼎を割りますよ!?) (げ、………仕方ない、はいはい行きますよ!だから睨まないでって!) 人間が不幸になるか、 私が幸せになるか。 どっちが早いでしょうか? ←→ |