家守と囲守
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十分を全力疾走して、家に帰ってきた私は急いで部屋に駆け込んで、部屋の鍵を閉めた。
「………御神鏡っていくらくらいするの?」
これでお金に変えられないくらい高かったら真面目に働くしかない。誠意で示すしかない。
「め、メール!あいつに相談!」
東京の同級(以下略)に相談するためにプリクラの貼ってある青いケータイを手にする。
急いでメールを作り、送信。と。
午後の三時くらいだから一時間くらい間が空くけど………律義にメール返してくれるから好きだ。友達としてね!
「あぅ〜……どうしたらいいんだよぅ………」
困ってる時って良い考え浮かばないよねぇ(笑)
ベッドにやけくそダイブすると、ぼふん、と空中に埃が舞った。
『尊き真白の神が憂いておられる』
『お可哀想に。あれもあの黒き夜刀の神のせい』
「そうなんだよ御神鏡割っちゃっ…………………………………………て?」
私は、今だれと、会話した?
『あな恐ろしや。されど心配召されるな』
『我ら家守と囲守。か弱き神なれど黒き夜刀の神より真白の神をお守りいたそう』
「………あ、ありがとうございます」
顔を上げると、ベッドサイドに二人?の小人が立っていた。
何で疑問符が付くかって?
単純さ。だって………
爬虫類が二本足で立って、着物着てるんだもん。
「………どっちがヤモリさん?」
『私でございます』
恭しく頭を下げたのは縹色の着物の爬虫類。
「……真白の神って?」
『貴女様でございます』
今度は紫苑色の着物の爬虫類。
えっと………イモリさん?だったっけ?
「………えっと、神違いです。私人間だし」
『夜刀の神より「顕現」の鏡を奪いしは真白の神』
『今は人であれど、現人神<あらひとがみ>となられておられる以上、貴女様は夜刀の神と対の神』
いーみーが分からん!
わかりやすく説明しておくれよ!
とか何とか頭を捻らせていると、ヤモリさんとイモリさんはいきなり私の頬に手を触れた。
感触は………ない。
気持ち悪いも何もない。冷たい水が腕に落ちた時みたいな、あぁ、なんか在るな、ぐらいの感触。
イモリさんが『お静かに』と釘を刺した。
「(なに…………?なにが起こるのっ!?)」
天井に、黒いシミが浮かんだ。
じわり、じわり、じわり。と黒いシミはやがて天井全てを真っ黒にするぐらいに広がり、そのシミは重量に従う血のように床に黒い斑点を落とした。
「……!?」
ベッドにいて良かった!
床は黒い液体で真っ黒に変貌し、真っ黒な床に大きく赤い人間の目のような模様が浮かんだ。
『夜刀の神!』
叫んだのはヤモリさんかイモリさんか。どっちか分からない。
浮かび上がった目の模様が大きくうねり、黒い液体が急速に丸く集まったかと思うと、白い包帯のような細い布が球体を内側から切り裂くと――――
中から一人の人間が現れた。