不条理な死を与えられた死人に復讐の機会を与えるのが『屍揮者』の役割。彼らの復讐だという。

私もその不条理な死を与えられた一人で、生きていた時は金持ちの家で働くメイドであった。
奥様が旦那様が自分に愛を向けてくれなくなったのを私のせいだと思って殺してしまったのだ。


「成程、君は勘違いで殺されてしまったわけだね」

「そうなんですよー、これからイケメンな旦那様を貰おうとでも思ってた矢先これですよー、マジ信じらんないってか、貴方よく見たらイケメンじゃないっすか。どうです?私という破格値の奥さんはいりませんか?」

「随分ト図々シイ女ネ!メルハ渡サナインダカラ!!」


イケメンさんの足元の小さな人形が異議を唱えた。


「あー……なーるー、そういう趣味の方でしたか」

「ちょっ、待ち給え!間違っても私はそういう趣味の持ち主じゃ」

「すいませんねぇ、私もそういう趣味の方を旦那様にすると世間体ってもんがありまして……」

「だから違うと……!」

「で?そのイケメンさんは私に何の用で?」


顔色の悪いイケメンさんは咳払いを一つすると指揮棒をどこからか取り出し、これみよがしに振った。


「私はメルヒェン、君の復讐、私が手伝ってあげよう」

「……復讐?」

「君は勘違いで殺された。殺した相手――この場合、君がいた屋敷の奥方だね。彼女に対して復讐をしたいと思うだろう?」

「いんや全く思わない」

「そうだろう、さぁ、君の復讐劇をってえええ!?」

「奥様、勘違いだって気付いて泣いて詫びてくれたし、死んだ後に人恨むとか面倒。だからもういいかなって」


行き場を無くした指揮棒が、宙を行き来する。


「メル!!コノ女、復讐スル気ガナイノヨ!モウ帰リマショウ!?」

「エリーゼ……」

「あ。ちょっと、そこのお嬢さん、リボンが曲がってますよー。ほら、年頃の女の子なんですから服装に気を使わないと。っと、よし、あ。ついでに死んでから暇だったんで、薔薇の髪飾りなぞ作ってみたんです。付けてみましたけどいかがでしょうか?」


さっ!と鏡をどこから出したのかエリーゼに鏡を見せた彼女は幸せそうに可愛い、可愛いと言いながらエリーゼの髪やら服を弄っている。


「……マ、マァマァジャナイ!他ニモアルノ?ソノ、髪飾リトカ……」

「そうですねぇ、ブローチから指輪、首飾り、髪飾り、鍵から剣や盾の装飾、あぁ、食器装飾もできますし、布ならリボン、ドレスも仕立てられますねぇ。
こう見えて万能なメイドだったんで」

「…………メル!コノ人雇イマショウ!」

「え、エリーゼ!?」

「掃除ハデキル?」

「料理、洗濯、掃除、裁縫、会計、事務なんでもござれですよ!」



なんでこんな話になっているんだ。メルヒェンは冷静に考えつつもVサインを送る少女に愛想笑いを返した。














幸せMarchen計画!













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