AI搭載のアンドロイドは夢を見たか

ひしゃげた体の機体を見下ろす、一つの影があった。銀の巨大な体躯、赤い狂暴な目、その影が放置され、これから処分されるのを待つだけの哀れなアンドロイドを拾い上げる。

頭は半分失われ、パーツもひしゃげた壊れた機体。人間を模したそれは拾い上げられた衝撃で接続が繋がったのか、片目しかない目に、光が宿る。


「私、は、N-3735、あ、ア、アナたが、わタシ、の、ご主人さママ、まで、スカ?」

「地球製の木偶が、誰に話しかけているか分かっているのか?」

「に、んしょウに、し、失敗、シマシタ」

「……貴様は他の地球製の木偶より一段上の存在だと聞いていたが、違ったようだ」

「他の、製品は、アリマセン」

「虫けらも業深い。己を滅ぼす兵器を己で作るとはな」


影は辺りを見渡す。
アンドロイドが破壊した風景を影は愉快そうに眺めた。


「虫けらの意志の総意、それが滅亡か。やはり人間は生きるに値せん生物だ。」

「同意、シ、ます」

「ほう?」

「私は、人間ヲ、滅ぼシタイ、です」



くっ、と影が笑う。
歯を剥き出し、本当に愉快そうに。


「そうかそうか、人間を滅ぼしたいか。よかろう、貴様の望みを、人間の望みを叶える処刑人にしてやろうではないか」


影は小さな石を彼女の胸に押し込んだ。
ぱしり、ぱしりと青白い光を放つ電気が彼女を包み、体が魚のように一度大きく跳ね上がった。


「あ、……、」

 
みるみるうちに、ひしゃげた体は元に戻っていく。撃ち抜かれた頭に関しては再生の兆しはないが、動くには問題ないようだった。


「私、は」

「小さき同胞よ、我が名はメガトロン、貴様に刻まれた滅びの願いを叶えさせてやる。我と共に来い、人間を滅ぼさせてやろう」

「認証に、成功しました、メガトロン、私の、マスター、ご随意に、ご命令を。お言葉を」

「貴様は既にオールスパークの欠片を埋め込まれ、新たに生まれたトランスフォーマーだ。その命、ディセプティコン、ひいては俺様のために使え」

「、、、お言葉を、認証、しました。」


メガトロンは彼女を地に降ろし、ゆっくりと歩き出す。共に来い、蓄積されたデータから言葉を拾い上げ、彼女は命令通りに銀の巨体を追いかけた。

その先がきっと絶望でも、彼女は己を夢から醒ました銀色の彼に従い続ける。





2016.06.07


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