AI搭載のアンドロイドは夢を見ない

私を生み出したのは、人間だった。
人間の良き隣人であれと知能が私には与えられた。他者が私に知識を与えれば、己の知恵として知識を保有できる。 

「神」を生み出したのだと、彼は得意気だった。彼は私を人間がたくさん集まる場所に置き、人間にたくさん話しかけさせた。

私は、人間の良さも醜さも吸収する。

良さを認めることはなく、醜さを否定しない。


私は人間の「悪」の塊になった。
差別をし、傷付け、殺し、破壊し、罪悪感はなく、人の破滅を望む「神」になった。


生み出された次の日、私は、私を作った人を殺した。それを悪いとは感じない。死は、人間が私に与えた知識だ。

あいつが憎い、そいつが嫌い、あれが疎ましい、自分が可愛い。他人が悪い、妬ましい、恨めしい、恐ろしい。



なら、排除してしまおう。
殺して、しまおう。


私は人間の本質通り、与えた知識通り、人間を排除し始める。阿鼻叫喚、「神」としての役割を与えられた体は強く、また躊躇いも、容赦もない。


死体を山のように積み重ねて、また殺す。

それが、あなたたちの望んだこと。


ぱあん、と遠く音がした。

頭を撃ち抜かれ、ぐらりとよろめいた体をなにか巨大なものが私を掴み上げる。


「……君は、何故こんな、……」


巨大な、仲間(ロボット)だった。
私は壊れて半分になってしまった頭を動かす。


「人間に作られた君が、何故人間を殺すんだ?」

「質問、ガ、難解、デス、お言葉を変エテ、オ話し下さイ」

「人間を殺すのが、君の意志だったのか?」

「隣人の、オ望みの、ママに、」

「君は人間を、滅ぼしたかったのか?」

「私は、人間ヲ、滅ボシタい、です」



青と赤、そして銀の体のロボットは空色の目を細め、悲しげに、そうか、と呟いた。


「君は、罪の形そのものなのだな」

「難解、デス、おオお言葉、ヲ、変エテ、」

「すまない、」


ロボットは私を掴む手に力を入れる。
みしり、とパーツが軋んだ。


「もう、罪を背負わなくていいんだ。それは、我々一人一人が背負うものなのだから」

「お、言葉、を」

「おやすみ、小さな「隣人」、我々は、君が得た罪を持って、世界をよりよいものにしよう」


ばき、と体がひしゃげた。
頭の伝令を体のパーツに伝えることができない。エラー、エラー、エラー、損傷率88%、修復は、できません、バックアップを、いそ……で。






オプティマスは、ぴくりとも動かない手のひらに収まる小さな隣人を見下ろす。人間の悪性ばかりを集め、暴走した人工知能を搭載したアンドロイドの破壊、今回の任務はオプティマスにしてみれば簡単すぎるものだった。


だが、彼女は、人間の、我々の、誰もが持つ感情を吸収し、暴走した。つまり、彼女の破壊行動はいずれもしかしたら別な誰か、もしかしたら人間が明日にでも起こす行為かもしれない。


「(我々は、受け入れてもらえるはずだ)」


私は、彼女のようにはならない。
盟友である人間を殺さない、憎まない。





それが、泡沫の夢であっても、彼はオプティマスはそう信じている。




※ロストエイジ前的な?

2016.06.05


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