瞼の裏が白くなっていく。
それが太陽の光だということを認識するのにしばらく時間がかかった。
規則正しい呼吸が聞こえる。
薄っすらと目を開けると、隣には愛おしい彼が眠っていた
口の中が唾液で満たされる
やがてそれは薄く開いた口からこぼれ落ち、シーツを濡らす
現実になったんだ
あの子は私に、私はあの子に
私は彼の頬を撫で、口角を上げる
「あー…、おはよう」
不意に彼が目を覚ましたので私は慌てて顔の筋肉を元に戻す
「おはよ」
そして、柔らかく頬笑む
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普通を装い、朝の支度を始める
それでも
私の家で、私のエプロンをつけ、私の台所で、私は彼の朝食を作る
なんとも気分がいい。背筋がゾクゾクする
昨日まであの子のものだったものを私が塗り替えていくという感覚。もちろん、その中に彼も含まれている
私は彼が待つダイニングへ朝食を運び、彼の隣に座る
「ありがとう」
そう言って微笑む彼
やっと、やっと、やっと手に入った
私のもの
しばらく隣りで彼が私の作ったものを口に運ぶところを眺める
「そういえばさ、憶えてる?」
私は試しに彼に問いかける
「ほら、5年前に交通事故で死んじゃった子」
彼はコーヒーを静かに置いて言う
「さぁ、憶えてないな」
私は満足し、テーブルに置かれた彼の手に私の手を重ねる
「それがどうかしたのか?」
「ううん、なんでもないわ」
そして、私は彼の頬にキスを落とす
「私のこと愛してる?」
「愛してるよ」
私は耐えきれずに笑みをこぼす