「う、わぁ」
彼氏である高尾和成の部屋でとんでもないものを見つけてしまった。
それは、俗に言うAVだった。
しかも大量に。
別にAVを見ないでとは言っていない。
それは男性の性だと思っているし、
和成は別にAVに影響されずに私を好きでいてくれている。
でも、やっぱりこういうのを見るのは、
女である私には抵抗があるわけで。
「なーにしてんの」
こういう時に限って和成は、
タイミングが良いのか悪いのか分からないけど、
登場してくるわけで。
「えーっと...」
言い訳が思いつかない。
でも、どうやら私があたふたしてる間に、
和成に私の背中の後ろにあるものがバレたようで。
「あ、」
しまった、という顔をした和成。
私は別に怒っているわけではない。
でも、やっぱり、悲しい。
私じゃ満足させてあげられなかったのかな、物足りないのかな、
もしかして私とそういう事をするのが嫌なんじゃないかな、
そう思うとネガティブな考えがどんどん出てきてしまう。
考えれば考える程悪い考えが浮かんできて、
最終的には「和成は私の事が嫌いなんじゃないか」
と思うと、気付かないうちに涙が溢れていた。
「っひなた!?」
慌てて声をかける和成。
「ごめん、これは、その、あのー、」
「いいよ」
「...え??」
さっきの焦った表情とはうって変わって、
狐につままれたような顔をする和成。
「怒ってないよ、私」
「じゃあ、なんで泣いてるの...??」
「...和成が私の事嫌いなんじゃないか、って」
「は!?」
「だって、私じゃ満足させてあげられなかったから...」
そう言いかけると和成は必死になって話を始めた。
「あのさ、俺がひなたのこと嫌いになるわけないでしょ。
これは、友達が俺んちに遊びに来た時に、
お兄ちゃんから借りたって言ってそのまま置いて帰ったやつ。
俺は友達が取りに来るまで置いてるだけ。
だから俺は、ひなたじゃ物足りないとか思ってない。寧ろ逆。
俺はひなたじゃないと満足しないし...
そんなん、ひなただってそうだろ...??」
そうだったんだ、と頭で理解すると、
嬉しくて涙がすーっと引いて。
和成の質問に、こくん、と頷いた。
「ね??お互い同じだって。
俺はひなたしか愛せないし、ひなたも俺しか愛せない。
そんだけで俺は充分幸せだけどなぁ。」
和成が私の事、好き。
私も和成の事、好き。
なんだ、そっか、
どうやら、考えすぎでした
(...和成)
(んー??)
(あのビデオ、見てないの??)
(え、−っと、見てない)
(...見たんだ)
(...うん)
(っばかあああああ!!)
(ごめんごめんごめんって!!)