「森山君...」


何、何これ、私彼女なのに。
可愛い子見つけたからって私の事30分もベンチで待たせて。


挙句の果てに私の事放ったらかしてナンパした子と食事??

...ありえない。


そうだよ、私なんか普通だもん。


森山君が声かけに行ってた女の人、
私より身長も胸もあったし、優しそうで森山君のタイプだったし。


今頃2人で仲良くお話でもしてるんだろうな。


もういいや、森山君なんか知らない。




幼馴染の笠松幸男くん、通称ゆき。私が勝手に呼んでるだけだけど。
ゆきは女の子が苦手だけど、私は小さい頃から一緒だから大丈夫だという、
凄く初心な男子高校生である。
そんな彼は私の唯一無二の相談相手でもあった。


「ゆきー...っ!」


「っうお...なんだよひなた。
いきなりビビるじゃねーか」


「...」


「どうした、またアイツか」


そうして頭を撫でてくれるゆきの手が好き。
ゆきといるといっつも落ち着く。


...また、話聞いてもらいに来ちゃった。


「んで、今日はどうしたんだ?」


「...あのね、私別れたいんだ、森山君と。」


意を決して私が言うと、ゆきは、
ひなたがそうしたいんならしたらいいんじゃねーの。
と言ってくれた。あぁ、そっか。


私はいつもゆきがいないとダメだ。
精神的な面でいつもゆきに助けられている。


「...ゆきはやっぱり優しいね。
ゆきの事好きになればよかったな。」


「馬鹿、ひなたはまだアイツの事好きなんだろ?」


「え...」


何で分かるのかな、


「顔見てたら分かる。
何年一緒だと思ってんだよ。」


そう言ってゆきは私のおでこをこ小突く。
けど、黄瀬君にしてるみたいなのじゃなくて、全然痛くない。
ゆきは優しいなぁ。
やっぱりゆきはすごいや。


「...ゆきには何でもお見通しだね。
そうだよ、私、森山君の事凄い好き。大好き。
でもね、やっぱり大好きな森山君が、
私以外の女の人といると辛いの。
私じゃダメなのかなって。いつも自信なくして、それで...」


って、ああああああ...!!
言ってしまった。ゆきに言っても意味ないのに...!


「だってよ、森山」


「...っ!?」


ゆきの部屋にちょっと、
っていうかかなり不機嫌な森山君が入ってきた。


「何でそれ俺に言ってくれないの??」


「ご、ごめん」


「別れたいとか、思ってないのに言うな...馬鹿」


...どういう事?


「森山君は、私の事好きじゃないんでしょ、っ」


「...好きだ、大好きだ。縁起でもないこと言うなよ」


嘘...


「本当に??」


「ああ。」


いつもの格好良い笑顔で答えてくれた森山君に見惚れていると、
森山君は、ゆっくり私に近づいて私と彼の距離は0になった。


「ちょっと...!」


「愛してる。」

(もうデート中に女の子のとこ行かないでね?)
(...お、おう)
(―っもういい!!)
(嘘だって!!許してよー...!!)
(お前ら人の部屋でいちゃつくな)