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※R18












薔薇のかおりでむせかえるようで。

習い覚えた技術も、身ぐるみ剥がされて乱暴に頬を打たれた途端にずるずると剥がれ落ちていった。
軋むベッドの上に長い手足を投げ出した榎木津は、蔑むような目で益田を見やって何をぼやぼやしているタントと粗雑極まる口調で言った。白い肌や栗色の髪、顔の造形や体などはひどく上品で優雅であるため、余計にいびつさが感じられた。
榎木津礼二郎。自らを神だと自称する男。彼はきっと真実神にあいされているのだとおもう。すみませんと益田はいつもどおり軽薄に笑って、男の服を脱がせ始めた。寝台に横たわる榎木津の上に乗って釦を外す。つまらなそうな視線が肌を射す。榎木津からは酒と薔薇の香りがした。きっと香水の香りだろう。麗人の機嫌を損ねないように出来るだけ急いで服を脱がせた。彼は一言、嘗めなさい、と素っ気なく言った。


「早いよ」
榎木津は苛立ったように言って益田の性器をきゅうと握った。「ひッ、」男は益田の足を開いて無理矢理後ろから挿れ始める。「い、やあ、痛あ、い、んあっ、あっ」鼻にかかった声が益田の喉から零れる。榎木津は自らの唇を舌で舐めると、圧迫してくる内壁を引き裂き始めた。「ったい、たい、いたい、」「おまえ、泣く顔、いいね」似合うよ。
体の芯から崩れるようで、益田は泣いて、けれど使い慣れたその場所は、やがてどろりと解れていった。
「っはあっ、ああっ、や、あ、あ、あは」
「涎垂らして、そんないいの」下僕の癖にいやらしいね。耳元でそう囁かれれば、益田は首をのけぞらせて喘ぐしかない。「んんう、うっ、ふ…っ」脇の下から美しい腕が伸びてきて朱を掠る。「っあう!」気持ち良くて溜まらない。狂おしいほど、切ないぐらいに気持ち良くて、ふるふると腰を振って求めていく。全てが彼のものになってしまったようだ。粘膜に緩く円を描かれた。「あ、はん、はあん、あん、」「ばかみたいだね」酷い言葉。耳が蕩(とろ)けて仕舞う。
「あ、ああん、っはああん、」
たくましい手が益田の体をなぞっていた。脇腹から肋、胸、腰、尻、そこをぱん、と音をたてて叩かれて、いたいしびっくりしたのに感じて、真実ばかになってしまったのだと益田はおもった。「っ、あ」「締めるなこの馬鹿」もっと奥にほしかった。
ものの大きさを分かるだけに欠落感が物凄い。自分がどれだけ濡れているのかは知らないが、かなり蕩けて、ひくひくと、榎木津を奥へと誘(いざな)っているのだろう。どうして突いてくれないのか。「え、のきづさん」再び強く尻を打たれた。「ヒあッ、」「神と呼べ」
その手が尻の割れ目にそって結合部をなぞる。「恥ずかしいなあこんなに濡らして」「うッ、ふっ…」
くるおしかった。
体勢を変えられた。足をM字に開くように膝を押さえ付けて、榎木津は益田を正面から見下ろした。益田は指を噛みながら榎木津を見上げて媚びる。「おくに、くだ、さい」「いやだね」にべもなかった。それはおろか抜こうとさえされた。「あ、やです、まだ」「僕に指図するな阿呆」「ひい…ああん!」
ぎりぎりまで抜かれて、そうしたら一番奥まで一気に貫かれた。体中が煮えるようだった。いっそのことやめてもらったほうがましではないかと思う。
すごい顔だぞおまえ、石膏像のような顔に糾弾されれば何処にも縋りようはなくてそれは快感を煽った。「ふああん、か、みさま、あ、」涎が顎を伝い垂れた。
榎木津がおまえはほんとうに馬鹿だと言う。ざんげも審判も罰ですらあまくあまく苛むようで、薔薇の刺すらマゾヒストには快楽だった。「ごめん、なさい、っおくに、ください、かみ、さ、ま…あ」
体の中のものが膨らむ。体をのけ反らせて益田は喘いだ。神が天使の様に優しく微笑んで、初めてのキスが落とされた。薔薇の匂いが体の中にまで沁みるようだ。視覚からどうしようもない美しさで惑わされて憐れな男娼は薔薇の中に埋(うず)もれる。口を糊されたまま激しく突かれ始めて頭が壊れてしまいそうだった。
暴れて無理矢理唇を剥がすと榎木津が頬を打ち艶のある美声で死になさい、と託宣を下した。浅ましく欲していた律動が降ってきた。
「あっ、はあっあん、っあっん、」揺すぶられながら気持ち良いかと尋ねられて、益田はただがくがくと頭を振った。自分の乾いた前髪の感触が心地好かった。からだが溶ける。むせかえるような薔薇の香りに惑溺してゆく。益田は意識を手放した。




(please wait)








20110803




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