四 「あぁ…イイぜ…さいぞぉ……」 クチュ…チュァ… 才蔵の指の動きに合わせて、もう我慢できないといった風に、鎌之介が細い腰を震わせる。 城外。生い茂る草木に重なって、二つの影が妖しげに揺らめいていた。 「ハァ…んぁああ!」 「おい…あんま声、出すなって」 声が漏れて止まらない鎌之介の口に、才蔵は自分の左手をあてがう。もう片方の手は、アツくて狭い穴の奥で器用な暴走を繰り返していた。 …ズチュ!…チュュ…… 「ん!あぐっ…ああぁん!」 口を塞がれ、飲み込めない唾が口端を伝い落ちる。ますますと息絶え絶えになる。 「んっ、んっ…ひゃぁあ!」 どんなに口を塞いだところで、一番弱い急所を刺激されれば、高まりは抑えられず声となる。明らかに反応が違う一箇所を、執拗に責め立てる意地の悪い右手。 「あぁっ…んもう…テメェ!わざとしてンだろぉっ」 苦しくて苦しくて気持ちよくて身体中オカシくなって、足もガクガクな俺を見て、こいつ、楽しんでんだろ! 「わざと?ったりめーだろ。おまえが泣き入れたって…許してやんねーよ」 ―ゾクリッ 「そ、そんな冷たい目で俺をっ……にらんで…クソみてえにゾクゾクすんぜぇ……!あああ半端ねぇ!イきそうだぜうぉい!」 「てめぇうるせーよ。ちょっと黙ってろって」 口を塞いでいた左手を鎌之介の薄い胸の谷間に沿わせる。才蔵はそのまま、目の前でそそり起つ熱を突然、握り締めた。 「ハァ……ん、ぁああああ!」 強く締め付けて、ゆっくりと前後に扱いてやる。 「コレ握ってるほうが、口塞ぐより効果的だよな、おまえを黙らすのには」 息使いと合わせて才蔵は徐々に手を速めた。 「女みたいな面のくせに…ココはちゃんと男なんだなあ」 「んあぁっん」 苦しさに眉をひそめる、美しい青年。長いまつげはあふれた涙で水滴帯びている。 (…コイツがこんなにも扇情的な野郎だとは思わなかった) 今起きている事態は才蔵にとって、完全に計算外だった。 しばらくの間上下の動きを繰り返していると、何だか…自慰しているような気分になってきた。 ああ、こうしたらもっと気持ちイイんだよなぁ…。男なら誰しも手に染みついているであろう感覚。 才蔵は握っているモノの先端を人差し指で強く押した。 「んはぁっ!」 押して上下させて強く握って少し弱めて。もう限界と言わんばかりに、鎌之介の男性器からはドロドロとした透明の液が糸をひいている。 後ろの穴奥では変わらず一点を擦って爪立てて掻き回す。 「ハァ…んっな!」 「俺、自分でするとき、こうするのが気に入りなんだよ。…ケツは使わねーけど」 「な!?ん、ああぁぁぁ!!」 ―ドュピュァアア! 「んッ……んんあ…」 一層激しく急所を指で擦り付けられ、たまらず達してしまった。足を伝い、白い精液が鎌之介の股からしたたり落ちる。地面に飛び散った白濁の量を見れば、鎌之介が何度絶頂を迎えたか伺える。 「も…もう、足、腰…無理だァ……!」 ガクッと膝を折りかけて、才蔵に支えられる。 「まだ俺、一回もイってねぇけど?おまえはこの指だけで満足なわけか」 「さ、さいぞ…!んだから…早くイれてくれって!」 「バカ野郎。今日はシねぇって、初めから言ったろ?」 「ハァァ!?」 ふっざけんなぁぁ! 指だけで満足?この鎌之介が!? 「俺はてめェとヤり合いてえんだよおお!くれよ!俺にもっとデカくてぶっとい才蔵のアレをよォ!もっと汚ねえことしよ…う…ぜ…」 ―ドサァッ! 「おい!鎌…」 (ウッゼェ……ぜんぜん満足じゃねえよ才蔵のバーカァ…んでもなんか…いい…きぶ…ん…) 「意識手放す前に文句言ってんじゃねぇよ…」 力を失った身体の重さが両腕に圧し掛かる。 抱きかかえてみれば、細いわりに男の重さがある。 「ハァ…」 頬を伝う涙と口から零れ落ちた唾液を拭いてやりながら、才蔵に襲ってくる自責の念。 最初は、ちょっとからかってやろうと思っていただけだったのにな。こいつに効きそうな甘い言葉をほんの少し囁けば、事は簡単に運んだ。うざったく付きまとう小僧を、泣かして二度と傍に来ないよう仕向けただけのはずだったのだが。 現実は、今、目の前にいる紅髪を見れば分かる。 狂気に夢中なのは、いったいどちらの方か―。 |