「あぁ…イイぜ…さいぞぉ……」
クチュ…チュァ…
才蔵の指の動きに合わせて、もう我慢できないといった風に、鎌之介が細い腰を震わせる。
城外。生い茂る草木に重なって、二つの影が妖しげに揺らめいていた。
「ハァ…んぁああ!」
「おい…あんま声、出すなって」
声が漏れて止まらない鎌之介の口に、才蔵は自分の左手をあてがう。もう片方の手は、アツくて狭い穴の奥で器用な暴走を繰り返していた。
…ズチュ!…チュュ……
「ん!あぐっ…ああぁん!」
口を塞がれ、飲み込めない唾が口端を伝い落ちる。ますますと息絶え絶えになる。
「んっ、んっ…ひゃぁあ!」
どんなに口を塞いだところで、一番弱い急所を刺激されれば、高まりは抑えられず声となる。明らかに反応が違う一箇所を、執拗に責め立てる意地の悪い右手。
「あぁっ…んもう…テメェ!わざとしてンだろぉっ」
苦しくて苦しくて気持ちよくて身体中オカシくなって、足もガクガクな俺を見て、こいつ、楽しんでんだろ!
「わざと?ったりめーだろ。おまえが泣き入れたって…許してやんねーよ」
 ―ゾクリッ
「そ、そんな冷たい目で俺をっ……にらんで…クソみてえにゾクゾクすんぜぇ……!あああ半端ねぇ!イきそうだぜうぉい!」
「てめぇうるせーよ。ちょっと黙ってろって」
口を塞いでいた左手を鎌之介の薄い胸の谷間に沿わせる。才蔵はそのまま、目の前でそそり起つ熱を突然、握り締めた。
「ハァ……ん、ぁああああ!」
強く締め付けて、ゆっくりと前後に扱いてやる。
「コレ握ってるほうが、口塞ぐより効果的だよな、おまえを黙らすのには」
息使いと合わせて才蔵は徐々に手を速めた。
「女みたいな面のくせに…ココはちゃんと男なんだなあ」
「んあぁっん」
苦しさに眉をひそめる、美しい青年。長いまつげはあふれた涙で水滴帯びている。
(…コイツがこんなにも扇情的な野郎だとは思わなかった)
今起きている事態は才蔵にとって、完全に計算外だった。
しばらくの間上下の動きを繰り返していると、何だか…自慰しているような気分になってきた。
ああ、こうしたらもっと気持ちイイんだよなぁ…。男なら誰しも手に染みついているであろう感覚。
才蔵は握っているモノの先端を人差し指で強く押した。
「んはぁっ!」
押して上下させて強く握って少し弱めて。もう限界と言わんばかりに、鎌之介の男性器からはドロドロとした透明の液が糸をひいている。
後ろの穴奥では変わらず一点を擦って爪立てて掻き回す。
「ハァ…んっな!」
「俺、自分でするとき、こうするのが気に入りなんだよ。…ケツは使わねーけど」
「な!?ん、ああぁぁぁ!!」
―ドュピュァアア!
「んッ……んんあ…」
一層激しく急所を指で擦り付けられ、たまらず達してしまった。足を伝い、白い精液が鎌之介の股からしたたり落ちる。地面に飛び散った白濁の量を見れば、鎌之介が何度絶頂を迎えたか伺える。
「も…もう、足、腰…無理だァ……!」
ガクッと膝を折りかけて、才蔵に支えられる。
「まだ俺、一回もイってねぇけど?おまえはこの指だけで満足なわけか」
「さ、さいぞ…!んだから…早くイれてくれって!」
「バカ野郎。今日はシねぇって、初めから言ったろ?」
「ハァァ!?」
ふっざけんなぁぁ!
指だけで満足?この鎌之介が!?
「俺はてめェとヤり合いてえんだよおお!くれよ!俺にもっとデカくてぶっとい才蔵のアレをよォ!もっと汚ねえことしよ…う…ぜ…」
―ドサァッ!
「おい!鎌…」
(ウッゼェ……ぜんぜん満足じゃねえよ才蔵のバーカァ…んでもなんか…いい…きぶ…ん…)
「意識手放す前に文句言ってんじゃねぇよ…」
力を失った身体の重さが両腕に圧し掛かる。
抱きかかえてみれば、細いわりに男の重さがある。
「ハァ…」
頬を伝う涙と口から零れ落ちた唾液を拭いてやりながら、才蔵に襲ってくる自責の念。
最初は、ちょっとからかってやろうと思っていただけだったのにな。こいつに効きそうな甘い言葉をほんの少し囁けば、事は簡単に運んだ。うざったく付きまとう小僧を、泣かして二度と傍に来ないよう仕向けただけのはずだったのだが。
現実は、今、目の前にいる紅髪を見れば分かる。
狂気に夢中なのは、いったいどちらの方か―。




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