三 初めて鎌之介を抱いた夜、才蔵は言った。 『おまえが欲しい―』 男の自分が男に虐げられる忌々しいはずの夜。しかし鎌之介はたくましいの腕の中、思った。 (ああ、こいつになら春を奪われたって、殺されたっていい―) 誰かに求められたのは初めてだった。疎まれることに慣れすぎていた心に、なぜか才蔵の言葉が突き刺さった。嬉しい……というのだろうか。もどかしい、むず痒い、妙な感覚。 ―やるよ。全部やるよ。俺の命も身体も、好きにしやがれ。 もとよりあの日失っていたはずのこの命。 彼の熱い精液を後部に注ぎ込まれながら、鎌之介は満たされていく絶頂を感じていた。どんなにイイ女との性交でも、ここまで狂気したことはない。やはり才蔵だけなのだ。感じたことのない世界までイかせてくれるのは、才蔵しかいない。 「……なぁ?いいだろう?才蔵」 互いの距離を徐々に埋めていく鎌之介。 一歩、一歩と歩を進めるたび纏っている着物が地面に落ちる。 「…おい」 ―スルリ… 髪留めに手をかけて、紅い髪を散らばせる。滑らかな毛先が頬をなぞる。 「シねぇって、言ってるだろ鎌之介」 「いいぜ。その気にさせてやっからよ」 いよいよ二人の距離は無くなった。 鎌之介は上半身の着物を脱ぎ落とした。身に着けているのは下半身の薄い布だけ。 才蔵の右手をとり己へと誘う。首筋から鎖骨へ落ち、胸を下がり腰にまで手を這わす。 「なぁ…イこうぜ、一緒に」 「………」 次 |