袴の奥


「その腰、どうにかならねえのかよ!?」
突然部屋に現れた旋風。
前触れもなく大声で怒鳴り散らされる。
「肌…見せすぎだ!」
「これはこういうものですよ?」
「他にも着るものくらいあんだろ!?」
……不埒な袴、と言いたいらしい。
「案外風通しが良く着心地も悪くないですよ」
動きやすいこの格好は嫌いではないし、愛着もあった。
「そーいう問題じゃねえ!うっすい布巻いてるだけじゃねえかバカァ!」
何ともひどい言われように少しばかり腹が立つ。
「鎌之介こそヘソを出しているでしょう?」
「肌の露出面積がちげえだろ!」
「ではどの程度の露出ならいいんです?細かく説明してください」
「ちょっとだよちょっと!」
「ちょっととはどの範囲ですか?人によって感覚は違いますから詳しく教えて頂けませんか」
「うっ…」
ぐッと悔しそうに鎌之介が押し黙る。
彼には悪いが、口喧嘩で負ける気はしなかった。
「……ダメだ」
「はい?」
「やっぱりダメだあ!ちょっとも露出すんな!」
…黙ったかと思えばすぐに開き直る心の強さ。何度叩いてもへこたれない、つくづく弄り甲斐のある男。
「いきなり人の部屋に怒鳴り込んできて…一体どうしたんです?」
自分の目線よりも低い位置にある鎌之介の目を覗きこむ。
鼻が触れ合いそうなほど近づく距離。
「どうしたんです?」
もう一度、耳元で囁いた。
みるみる内に紅く熟れていく耳を満足気に六郎は眺める。
「……う、噂してたんだよ」
「噂?」
「…真田の小姓はイイ腰してる、って…おまえをヤらしい目で見る輩がいやがんだよ!」
成る程…と合点がいった。
「ぶっ飛ばしてやったけどなあ!…でも…そんな着物を着てるてめえも悪いんだぜ!?」
「…心配してくれたんですね」
「はぁ!?べ、べつに…」
不器用な彼をたまらなく、愛しく感じる。
「あなたという人は…」
六郎は、鎌之介の唇を奪った。
「…んっ!」
ぎゅっと結ばれた口を器用な舌でこじ開ける。
「んんっ…こ、小姓…」
開かれた口の中へ己の舌を滑り入れた。鎌之介の舌と絡ませ唇を吸いめちゃくちゃに口内を乱してやった。
「んはぁっ…はぁ!」
接吻を終えると同時にもれる苦しそうな息。
「本当に…可愛い人ですね」
「…はぁ!?」
「私のことを何と言われようが言わせておけば良いのです。…この袴を脱がすことが出来るのは鎌之介だけなのですから」
「な…っ!」
あたふたする彼の手を取り自分の腰元へ誘う。
「触れてください。もっと奥まで」
心配せずとも六郎は鎌之介のものであると、身体で教えてやる。
嫉妬深く心配性の恋人。




○アンケより甘々六鎌
しかし甘々にならなかった…!すみません(゚ω゚;)
ありがとうございました!


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