もっとして



「俺は男だァ!!」
この身体を見れば納得するだろう?そう思い上半身を曝したのだが。……激しく一点を凝視され、居たたまれなくなる。
「わ、わかったかコラ!」
「……そんな顔真っ赤にして威張んなって」
「ンだとっ…」
言い返そうとした文句は言葉にならなかった。
才蔵の手が、鎌之介の胸元に触れている。
「ななな何しやがる!」
「大事なことは目と感触で確かめねえとな」
明らかに薄い鎌之介の胸を撫で上げる、温かい手。
「…やめろクソ」
いつかの感覚が再現される。
自分の頭を撫でる優しい手のひら。思い出すだけで、身体中が熱くなりフワフワ浮いたような感覚に陥った。抵抗できない。
わざと胸の突起をさけて慣れた風に指を滑らせる才蔵。
「心臓、バクバク鳴ってる」
「ん…っるせえ…!」
なんとも表しがたい気持ち。
普段なら殴り飛ばしてやってもいいくらいだ。
 ー今俺はおかしくなってンだ。
優しい手の温もりに惑わされている。
「触って欲しそうだな?」
桃色に小さく膨らんだ突起を、才蔵の人差し指が押し上げた。
「んあぁっ…」
…バカバカバカ!才蔵相手に何という声を出してるんだ自分は!爆発寸前の羞恥心。
思わず漏れた声に才蔵が目を細めた。
「…そんなにイイのかよ鎌之介」
「べ、べつにっ…」

「触ってくださいと言ってみろ」
口元をいやらしく吊り上げ、鎌之介を見下ろす男。
「…ハァ!?」
「言えよ」
「っ!ざけんなボケッ!」
「言わないのか」
「あったりめーだろうが!!」
「…あっそ。んじゃ、終いだ」
唐突に胸から離れていく温もり。
「なっ…」
本当に、本当にコレで終わりなのか…?
「物欲しそうな顔しても、駄目だぞ。…うまくねだれたら、また触ってやる」
カァァァ!顔から火が吹き出た。
腹立たしいやら恥ずかしいやら…名残惜しいやら。
一人取り残された鎌之介。
文句の一つも言えずじまい。遠くなっていく背を見つめながら、放心していた。
「んだよ…なんなんだよ…」
男の胸触って楽しそうにしやがって…。
男に胸を触られ恥ずかしい声をあげていた己は……もっと変態だァァ!

あのまま行為を続けていたらどうなった…?

「ンなああ!!」
考えるだけで、この場からすぐに消え入りたくなった。
全部…全部、才蔵が悪い!


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