部誌7 | ナノ


ジェラシー・ゲーム



友達から恋人に昇進する為にはどうすればいいですか。
いもしない神様に問うてみる。
まあ、返答はないんだが。

「全く、君という奴はなんて駄目な男なんだろうね。」
「…仕方なかったんデスー。」

店の机に突っ伏していると冷たいお茶が目の前に置かれた。
グラスから伸びる腕を目線で追いかけるとそこには何時ものように呆れたように笑うなまえの姿があった。
居心地が悪くてしょうがない。

「なんで故障したエアコンを整備しておかないかな。」
「お金がないんですヨ。」
「此処にくるお金はあるのにね。」
「甘味を食べる金位あるわっ!」

ふーん、と興味なさそうに返事をしてテーブルの向こう側に腰を下ろす。
なまえが経営する喫茶店はそこそこの人気があるが、今は人が余りこない時間のため、まばらだ。
経営者であるなまえ本人がこうしてサボっていてもあまり目立っていない。
出された冷たいお茶を一気に飲み干す。

「ん?」
「なぁに?」

なまえは仕事時に髪をよく縛ってる。
その髪を縛るのに使っていたお気に入りの髪留めが壊れてしまっていたと先日言っていた。
何日かは黒いゴムを使っていたはずだが、今日は涼やかな水色のシュシュを使っている。

「髪留め、買ったんだな。」
「ふふふ、残念。もらいものだよ。」
「…誰から?」
「秘密。」

にこにこと嬉しそうに笑い、シュシュに優しく触れるなまえ。
その姿が可愛いとは思いつつ、その送り主に男の影が見え、ふつふつと黒いものが胸をしめる。
その表情を引き出すのは俺なはずなのに、何故違うのだろうか。

「銀さん?」
「…はぁ。」

懐に隠していた髪留めを出すタイミングを失ってしまった。
またまた店先においてあった薄ピンクの花がついたクリップ。
たいした金額ではないが、初めて贈るプレゼントだったのに。
これをきっかけに距離が縮めばなんて打算をしたから罰があたったのかもしれない。

「どうしたの?」
「いや、似合ってるな、それ。」
「ふふ、ありがとう。」

褒めたことに驚いたのだろう。
少し目を丸くしてから、にこりと笑ったなまえは仕事に戻るため、席を立った。
遠のく体に合わせて揺れる髪。
水色のシュシュは彼女の内面を表すにはぴったりな色で、それが余計憎たらしく思えた。

「あー、くそ。」

頭をがりがり掻き、立ち上がる。
エアコンが壊れているのは事実だが、ここに来た目的が果たせなくなった以上、いても仕方ない。
午後4時でも残っているうだるような暑さに参りながら帰路につく。
こんな些細なことで一喜一憂するのもいい加減終わりにしたいのに。
うまくいかない駆け引きに心は燻るばかりだ。



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