部誌7 | ナノ


のどがいたい



目が覚めたら喉が痛かった。
毎日真っ裸で寝ても風邪なんて引いたことのないザップとしてはなぜ喉が痛いのか検討がつかない。ちなみにいまのザップはいつものごとく裸だった。
とにかく起きるか、勢いよく起きあがろうとしてーーー一起きあがれない。あれと不思議に思って再び起きようと試みたら、じゃらっと音が手足と首から鳴った。
その音がなんなのか、ザップは全くわからない。否、理解したくないというのが正しい。信じたくない思いで恐る恐る首を動かすもーーー首さえ動かず、仕方なしに黒目だけを動かした。
手首にはがっちりと填められた鉄製の手枷、そこから重量のある鎖がベッドの柵に繋がっていた。今度は足に視線を移す。足にも同じように枷が填められ、やはり柵には鎖が繋がっている。
拘束されている。さすがのザップも血の気が引いた。

「おいおい嘘だろ!?なんだよこれ!!おい誰か!誰かいねえのか!!」

周囲に人がいるのを確認しようと大声を上げるが沈黙が答えとなって返ってくる。大声を上げ続けるも、喉の痛みのせいで激しく噎せてしまう。それでもザップの声だけが無情にも部屋中に響いた。
咳が落ち着くのを待ってから、ザップは改めて状況を考える。視線だけで確認してもここはベッド以外なにもない。視線の端にはドアが見えるから脱出は可能、問題はどう脱出するかだ。手足が拘束されているせいでポケットに入っているライターが取れない。最悪の状況に舌打ちをした直後、ドアが唐突に開いた。

「あ、ザップくん起きたんだ?おはよー、よく眠れた?」

声は女だった。まるで友達に挨拶するかのような明るい声の登場にザップは不覚にも拍子抜けしてしまう。だがその場違いな声がこの状況を作った本人なのはすぐに理解した。
顔を動かせないから女の顔を見ることができず、女が近づくのを待つ。近づいたらいつも調子で口説いて枷を外させればいい。そしてライターを出させて脱出するのだ。完璧な計画ににやつく口元を押さえきれない。そして、ザップの予想通り女は近づいてきた。あと五歩……三歩……そして一歩というところで女が顔をのぞき込んでくる。

「なににやついてるのザップくん、そんなに昨日のよかった?」

自分の顔を見るや、にっこりと微笑みを浮かべる。予想したよりも可愛い。胸がもう少しあったら最高だが、顔はめちゃくちゃ好みだ。会話からして昨日はお楽しみしたのだろう、記憶は酒とヤクでラリってたせいで記憶が全然ない。こんなかわいい子と楽しんでおいて記憶がないなんて惜しい。こりゃあ脱出前にもう一回しけ込むしかないな、にやつく口元をなんとか抑え、一番かっこいい決め顔を作って女に微笑む。

「あ、あーと……素敵な夜だったぜハニー?よかったら君のかわいい唇にキスしたいからぜひこの枷を」
「それならよかった!ザップくんってば『処女』だったのにめちゃくちゃ喘いでたからそんなに気持ちいいのかと思って私も久しぶりにハッスツしちゃった!」

そのせいで喉ガラガラにさせちゃったみたい、と手を合わせて謝ってくる女のあざとさがまたかわいい。可愛いで終わるはずだった。女の聞き捨てならない台詞を聞くまでは。

「……な、なあハニーいまなんていった?」
「んー、なんてってー?」
「いま処女とか、なんとか……」

本音をいえば聞きたくはない、しかし男には聞かねばならないときがある。聞き間違いだと信じてザップは勇気を振り絞って尋ねた。
女はザップの意図に気づいたのかああとぽんとわざとらしく手を叩いてみせる。

「そういえばザップくんあのときあたしが一服盛ったのもあるけど最初からラリってから覚えてないのも仕方ないか」
「一服?え?」
「なら教えて上げる、昨日ね……ザップくんの初めて、奪っちゃった」

ぎしりと女はザップがいるベッドに音を立てて乗り上げる。変わらず笑顔を浮かべたまま、手を伸ばした場所はーーー

「ひぁっ!?」

その場所に触れた途端、体中に電流が走った。同時に甲高い声が聞こえた。それが自分の声だと気づくまで数秒を要した。
いまのは自分の声なのか、羞恥と絶望が入り交じった感情が一気に沸き上がる。そんなザップの様子を女は楽しそうに見下ろしていた。

「ねえ本当に覚えてないの?あたしここにいっぱい入れてあげたよ?」

その間も女はある場所だけを撫でるだけ。それだけなのに、なぜ電流が流れるのか。微弱の電流を受け続ける拷問に必死に奥歯を噛みしめる。
それでも女はやめない―――普段ザップがトイレでしか使わない場所への愛撫する。
そこで女の台詞を理解した。その事実がザップを絶望という崖から突き落とすには十分であった。

「や、やめっ……っ、離れろレイプ女っ!!」

必死に抵抗しようにも手足の枷がザップの行動を阻む。必死に罵倒をするが女は傷ついた顔を見せずむっと顔をしかめる。

「レイプ女ってなによぉ、そういってめちゃくちゃよがってたんだから和姦じゃない」
「一服盛っといて合意なわけあるか!!」
「そのまえにラリってたんだから同じじゃない?」
「同じじゃねぇよ!!つーかテメェ一体何者だ?!!」
「あたし?あたしはねぇ、なまえっていうの」

昨日名乗ったんだからいい加減憶えてね、となまえと名乗った女は撫でていた手を離す。ザップがほっと安堵したのも束の間、いきなり乳首を思いっきり抓る。あまりの痛さに星が見えた。

「いっ!?」
「あたしの友達にね、サフィーって子いるの。最近変なガングロに言い寄られて困るって相談されたんだよね。どんな男なんだろって調べてみたらこれが面白いくらいに屑で最低男、さすがのあたしもドン引きしちゃったよー」
「さ、サフィー……?」

その名前に聞き覚えがあった。最近知り合った自分好みの女、お近づきになりたくてここずっと彼女が働いているお店に通っていた。
この女があのサフィーの友達だって、信じられない気持ちでなまえを凝視する。その視線に気づいた女はすっと目を細める。

「でも、そういうゲスなやつほど調教し甲斐があるよね」

口許は微笑を浮かべたまま、全く笑っていない瞳で自分を見下ろす。ぞくりと悪寒が走り抜けるも気付かれないように鼻で笑い飛ばす。

「……ハッ、このザップ・レンフロ様がオメェみてぇなレイプ女に屈するなんてありえねぇよ」
「え?昨日ザップくん自らやってくれたアヘ顔Wピースが見たいって?」
「すみませんそれだけは勘弁してください」

いま枷がなかったらジャパニーズドゲザをしていた。必死に謝るザップを見てなまえは腹を抱えて大爆笑しながらスマフォで写真を連射する。手元にライターがあれば、ザップはギリギリと奥歯を噛みしめる。

「でも昨日はラリってたもんね、逆にいまのほうがいいかも」
「あ?どういうことだよ」
「だってねぇ」

記憶がある方が嫌でも憶えるでしょ?自分が女にアナルファックされて善がり狂ったなんて。

耳を疑う台詞を共になまえはザップの腹の上に乗った。いつもなら絶景ともいえる光景はいまは最悪の光景でしかない。

「ザップくんのためにとっておきの用意したの、昨日の具合から見てたら昨日のじゃ物足りないと思って極太持って来たんだから」
「ごくぶと」
「」

鼻歌交じりで取り出してきたのはアルミケース。パチンと音を立てて開けるとザップに中身を見せつけた。
その中身を見た瞬間、ザップは意識を飛ばしかけた。ザップの息子よりも一回りも太いバイブにエネマグラ、そして太さの違う細い棒、挙句にはペニバ―――ザップはそこで考えるのを放棄した。
フリーズしたザップをよそに、なまえは数々の道具の中から一際太いバイブを取り出す。グロテスクな造形をしたそれの先端を軽いキスを落とす。

「この部屋に出るまでにザップくんが女の子だっていうのをたくさん教えてあ・げ・る」



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