部誌5 | ナノ

そんなお前が、



「……」

何かを諦めた様子で、溜息を吐き出す大我。その目はいつになく覇気がない。見ているこっちが心配になってつい声をかけてしまう。

「大我どうしたの、今回の気に入らなかった?」
「気に入るも気に入らないも……お前のそのぶれなさ具合に呆れただけだよ」

せっかくの誕生日っていうのに、と溜息まじりで自分の着ている服に目を向ける。
本日の大我は王道のメイドさんだ。黒のミニスカワンピに、レースをあしらった白のエプロンとカチューシャ。もちろん脚は絶対領域ニーソ。
当初はクラシカルメイドと非常に悩んだけれど、やはり大我の逞しい太股を眺めたいので苦渋の決断をしてミニスカを選んだ。
今回は俺の誕生日だということで頼んだところ、もう諦めがついたのか抵抗なく着てくれた。慣れって素晴らしい。
念願の大我のメイド姿にうっとりと眺める。大我はというと心底嫌そうな顔をしながらスカートの裾を掴んでぺらぺらと仰いでいた。

「いつも思うけど、よくこういうの見つけてくるな」
「そりゃあ大我のためにオーダーメイドして注文してるからね!!アメリカに感謝!!」
「そこで感謝すんじゃねえ!てーかこんなのに使う前に違うのに使えよっ」
「違うのって……」

大我の女装姿を拝むためにお金など厭わない。たとえこのオーダーメイド発注のメイド服が大我の一週間分の食費ぐらいしたとしてもこの日のためだと思えば報われる。
突然いわれて考えてみる。全く浮かばずうんうんと唸る自分に大我は大げさに肩を落とす。

「そこまで悩むことじゃないだろ……」
「だって大我以外のことで使いたいとか思ったことないから」
「あのなぁ……」
「もしかして大我こういうの嫌だった?」

てっきり乗ってくれるから、と言葉が終わる前に睨まれたのでお口にチャック。

「……嫌に決まってんだろ」
「愛想尽かした?」
「とっくに尽かしてる」
「マジか」
「こんなことされて喜ぶやつがいるかよ」
「でも大我そういってごめんなさい」

カチューシャを投げるポーズをされて即座に謝罪したらなんとか投げられずに済んだ。
現役バスケット部員に投げられたりなんかしたら俺の顔が凹んでしまう。
ほっと胸を撫で下していると「でも」と大我の言葉が続く。

「そんなお前が、」

それ以上は言葉にならず、唇だけ動いてみせた。
口にしてから大我は恥らうように視線を外す。最後は照れで口にしなかっただろうが、ばっちりと唇の動くを把握した。
理解した途端、口元が一気に上がって弧を描く。

「たーいーがー」
「うわっ!な、なんだよっ」
「せっかくメイドさんなんだからさ、あのセリフいってよ」
「台詞だぁ?……っ」

ニーソの上から指先で太股の付け根をなぞる。ゆっくりと筋肉で出来た窪みを通り、スカートの中に手を突っ込ませる。
大我は一瞬体を捩じらせるが、抵抗はしなかった。きゅっと目を閉じる大我に顔を近づける。

「『おかえりなさいませ御主人様』って」

空いている手の親指で唇を撫でる。大我は瞼を開くと目で何か訴えていたが、すぐに目を伏せて口を開く。

「……オカエリナサイマセゴシュジンサマ」
「ぶはっ」

あまりの棒読みっぷりに耐えきれず吹き出す。それ以上笑わないようにしたが、身体が震えてしまっていて意味がない。
自分の様子に大我は顔を真っ赤にさせて体を震わせる

「コノヤロっ……!」
「ちょっ、大我ごめんってっ、謝るからカチューシャを……ぐほぉっ!」




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