部誌5 | ナノ

そんなお前が、



「いやー、ほんと、那智ってカッコいいっすよねー」
「だろー。昨日の試合のあの場面なんかさー」
「あぁ、あそこのプレーっすよね。もう、あそこ、超痺れちゃって」
「やー、やっぱなまえはわかってんなー!」
「それほどでもないっすよー」

兄弟たちと会話を弾ませながら、もりもりと一緒に飯を頬張るなまえを眺め、食卓に戻ってきた那智は顔をしかめた。
極々当然のように家族の食卓に混ざっているなまえは、那智の隣の家に住む、いわゆる幼馴染だ。

「ん?那智、どうかしたか?……あ、これは俺の分だからな!やんねーぞ!!」
「そういうんじゃねぇよ!!」
「わー、怖い怖い」

慌てたように自分の分の皿を引き寄せたなまえに那智はさらに睨み、なまえはけたけたと笑いながら食べている。
なまえの親がいない時は、斎賀家の食事に混ざって食べることが多く、なまえ用の食器も斎賀家には常備してある。

「ていうか、ほんと、那智の飯は最高だわ」
「お前もうちで飯食うんならもっと早く言えよな」
「えー?朝にちゃんと言ったって。昼にも言ったし」
「知らねぇぞ」
「えー?」

首の後ろを掻きながら首を傾げたなまえを軽く睨み、那智は食事に戻った。
そんな那智をちらりと見て、小さく笑ったなまえを古鷹は足で小突き、小突かれたなまえは古鷹を見るとちょっとだけ肩を竦めて見せ、ぱくぱくと食べ始めた。





「なまえ兄、続き、明日な!」
「おー、わかったわかった。あ、青葉さん、この前借りたスコア、明日持ってくるっす」
「あぁ、あれか。もういいのか?」
「コピー取らせてもらったっす。古鷹さんも、また手合せしてくださいよー」
「今度なー」
「はーい。んじゃ、お邪魔さんっしたー」

いつものように食後も居座り、散々遊び倒したなまえは男三人とそんな会話をして、那智と並んで玄関を出た。

「ていうか、那智」
「あ?」
「別に那智も外に出てくることないっていつも言ってるだろ」
「うっせぇ。俺の勝手だろ」
「はいはい」

軽い足取りで明かりのついていない自分の家にまで歩いていき、ごそごそと鍵を開けるなまえを、那智はじっと見ていた。
カチリと、鍵の開いた音がする。

「那智、」
「なんだよ」
「飯、美味かった」
「そーかよ」
「昨日の試合も、すっげぇカッコよかった」
「そーかよ」
「俺さぁ」
「あ?」
「そんなお前が、」
「何だよ」
「……やっぱ、なんでもない」
「……あっそ」
「じゃ、おやすみ、那智」
「おう」

ドアに手を掛けたままのなまえとそんな会話をし、少し満足したような表情のなまえが軽く手を挙げて中に入って行くのを見届け、しばらくしてなまえの部屋に明かりが付くのを確認してから那智は家の中に戻って行った。




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