部誌5 | ナノ




ふ、と目が覚めた。
おそらく朝なのだろうが、本来なら起こしに来るはずのなまえが来ていない。
今日は休みだと話してはいたが、休みでも通常と同じように起こしてくれるなまえ。
なまえに一体何かあったのかと思い布団を出ようとして布団に戻る。

「さむい」

寒いを通り越し、痛い程。
正直この布団から出たくはないが、起こしにこないなまえも気になる。
根性を出し布団から出、綿入りを羽織り部屋を出た。

「あっ!吉継様やっと起きましたね、本当寝坊助さんなんですから!」

なまえが雪遊びに興じていた。

「主、何をしておる」
「何をしておるじゃありません!雪がすごくてとっても寒くて、吉継様どうせ起きないだろうなって思って遊んでたんです!そしたらほら!いつもより一刻ぐらい遅いです!寝坊助さんです!」
「遊んでおるんではないか」
「ではいつもの刻に起こしてもよかったですか?」

その言葉に思わず黙り込んでしまう。
それだけは遠慮してもらいたいものだが。
なまえは熱心に雪像を作っていた。

「それにしてもよくもまあ、いくつ雪像を作っておる」
「えへへ、これが吉継様、三成様、半兵衛様!」
「下手すぎて誰が誰か判らぬわ・・・もしやその巨大な雪像は太閤殿か」
「正解にございます!」

女中の身、大した着物も持っておらぬゆえ寒かろうに。
それでもなまえはとても楽しそうだった。

「風邪をひくぞ」
「吉継様と違ってなまえめは健康が取り柄にございます!」

火鉢を用意し、雪遊びをするなまえをのんびりと眺めていた。
太閤殿のまったく似ていない雪像が完成し、今度は何やら雪玉を作り始めた。
我の数珠程度の大きさから少しずつ転がして行き、大きくなってゆく。

「主、まさかそれは、暗の鉄球か」
「はいっ!すごいです正解です!」
「ヒヒッ、面白そうよな、手伝ってやろ」
「えっ、ありがたいですが、大丈夫ですか?」
「寝込んだら主が世話してくれるであろ」

暗の鉄球を模した雪玉を二人で作っていく。
ごろごろごろごろ、二人で転がす。
酷く寒かった体も、動かしたお陰で暖かくなってきた。

「雪も、こうであればマァ楽しいものよな」
「吉継様がよかったら、また遊びましょうね!」
「・・・ヒヒッ、気が向いたらのー」
「はいっ!楽しみです!」

また遊ぼうと言ったなまえだったが、結局雪像作りにもしっかりと付き合わされた。





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