部誌5 | ナノ

いつまでも一緒に



「うそつき」

恨みがましい目で見られても、なんのことだ、と思う。
久しぶりの幼なじみとの会話の始まりが唐突の罵声で、おれ、みょうじなまえは混乱した。

「ずっと一緒だって言ったくせに、嘘つき」

目の前で涙目のイケメンが睨み付けてくる。何故睨まれるかも分からず戸惑うことしかできない。途方にくれるおれに、イケメンーー及川徹は、厳しい視線を絶えず向けてくれる。



突然だが、及川徹とみょうじなまえ、あとついでに岩泉一は、幼なじみである。
昔は三人仲良く遊んでいたものだが、トールとハジメがバレーにハマり出してから、疎遠になった。おれは根っからの文系人間で、運動できない訳ではないが、進んでしようとは思わない、まあそんな人間だった。
中学や高校でバレー部に入ると、自分の自由時間なんてなくなる。バレーに夢中な二人は、おれにバレーを強要しなかったのがありがたかった。だけど二人がバレー部に入ることでおれがぽつんとひとり残されたような状態になることまでは思い至らなかったようだ。

別にトールとハジメ以外にも、友達はいる。二人は確かに特別だったけれど、二人揃って夢中になったものと、おれのしたいことも・好きなことは別なものだったから、仕方のないことだとも思う。
トールとハジメ、おれとの間に隙間が出てきて、それはぐんぐんと広がっていった。付き合う人間も違えば、生活習慣や嗜好も変わっていって、おれたちはいつしか疎遠になった。

同じ学校に進学したものの、お互い報告なんてことはなく、疎遠のままが続いた。まともな会話すらなく、高校一年生が終わりそうな、ハロウィン間近の今日。
突然トールに絡まれて、混乱なう。

「なんで勝手に離れていくの、勝手にどっか行かないでよ」

引っ越しした覚えもどこかに行ったつもりはなく、おれは普通に生活してきた。

「一緒の学校に入れて嬉しかったのに。お前からはなんの報告もアクションもないし、相変わらず俺も岩ちゃんも無視するし!」

無視してない。疎遠と無視って違うよね? 確かに目があった気がしてもスルーしたこともあったけど、おれに挨拶されても微妙かな、ってしなかっただけだし。

「嫌われたのかなって怖くなるし、岩ちゃんは俺に丸投げしてくるし! 勇気出なくてぐずぐずしててた俺も確かに悪いかもだけどさあ、だからってこれはなくない!?」

どれだよ。
話の筋がいまいちよくわからず、おれの眉間には皺が寄っていたと思う。しかしなんか喋るのでいっぱいいっぱいらしいトールは、おれの様子に気づいた様子もなく、べらぺら喋り続けている。

「昔約束したよね、俺と結婚してくれるって、ずっと、いつまでも一緒にいてくれるって! だから俺を選んでくれるでしょ、あのこと付き合ったりしないよね!?」

なんで知ってんだ。
実はつい先ほど、おれは告白されたのである。こっそり呼び出され、人気の少ない校舎裏で蚊の羽音のようなか細い声で告白され、応える前に逃げられた。なんだかよくわからないし、相手が誰なのかすら知らないから返事を出来そうもない。
誰にも知られていないはずの告白劇を、なんでトールが知っているのか。

「つけたからだよ!」

疑問が顔に出ていたのだろう、ようやくおれの顔を見たトールが自信満々に答えた。馬鹿か。馬鹿なのか。

相変わらずの馬鹿っぷりに、変わっていないなあと嬉しくなった。勝手に拗ねて疎遠になってしまったけど、トールは何にも変わっていないのだ。

「相変わらず、ばかだなあお前」

思わず微笑みが漏れた。トールはぽかんとした顔をして、その顔のまま顔を真っ赤に赤らめた。器用な奴である。

「なまえ、すき。俺と一緒にいて。これからさきも、ずっと」

その答えは、トールのみが知る。




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