部誌5 | ナノ

そんなお前が、



「木兎さん!今日の俺のブロックどうでした?」
「まだまだ弱っちいな!俺のストレート止められないだろ」
「転向して数週間でここまで成長した俺を褒めてくださいよ!」
「よ〜し、じゃあ今日もスパイク練習付き合えよな!」
「えっ、俺もう限界なんですけど、ちょっと、木兎さんってば!」


練習終わり、木兎さんに引きずられていく後輩をいい気味だと眺めていたら目が合った。なぜか勝ち誇った笑みを浮かべられたので、声は出さず彼だけに伝わるよう口だけ動かして言葉を紡いでいく。『ブロッカー、頑張ってね』途端に顔を歪める後輩が面白くて、俺の嗜虐心が更に疼いた。


「木兎さん」
「お、赤葦。ちょうどよかった、今からスパイク練するからトス出してくれよ!」
「あっ、木兎さん、俺!俺がトスも出しますから!赤葦さんはどっか行って下さい!」
「ブロックとセッター同時にはできねぇだろ。大丈夫だよ、赤葦はいつも付き合ってくれるし。なぁ、赤葦」
「全く、仕方ないですね。少しならいいですよ」


俺がそう言うと、木兎さんは嬉しそうに笑い、対して彼は嫌そうな顔を隠しもせず俺に向けた――反応は違うけれどこの二人は似ている。見た目は俺より大きいのに中身はまるで子供なところとか特に。相手する俺の身にもなってほしい。一年の時はセッターだからという理由で木兎さんのお世話係をやらされ、二年になって木兎さんに憧れる後輩が入ってきたと思ったら、なぜか俺をライバル視してことある毎に突っかかってくるようになった。木兎さんは鈍いんだか知らないけど全く気にしていないし、周りは面白がって俺達三人を眺めているだけだし。そういうわけで、憂さ晴らしに後輩をいじっても仕方ないだろう。


「おーい、赤葦!早く来いよ」
「あぁ、すみません」
「木兎さん!赤葦さんなんか放っておいて早くやりましょうよ!」


木兎さんの隣で準備運動をしている後輩を眺めていたら、ふと、木葉さんが「木兎と話しているときのアイツの頭に犬耳が見えるのは俺の気のせいか」と話していたことを思い出した。確かにそうかもしれない。犬って懐く人間には徹底的に懐くけど、懐かない人間には本当に懐かないんだよな。まぁ、そんなお前が――気になって仕方がないなんて言えないけど。




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