部誌5 | ナノ

花ひらくように、きみは

この小説は18禁です。男性同士の性描写がございます。苦手な方、18歳以下(高校生を含む)の閲覧はご遠慮ください。




落とした明かりが、汗でじっとりと湿った肌を浮かび上がらせる。赤っぽい色調のせいで、よくよく目を凝らしても、あまり色の違いとかそういったことはわからないけれど、肌のきめ細かさや、産毛の様子までがよく見えた。
恥ずかしいから明かりを落とせ、と彼は言ったのだから、きっとそのことを告げると恥ずかしがるのだろうと思うと、告げられなかった。
内部に沈めた指を柔い粘膜が脈打って包む。粘膜の柔さに怖気づいて、みょうじは指を沈めたまま息を吐いた。
「……だいじょうぶ? 」
みょうじが聞くと、顔を背けて腕で隠したままに、菅原はコクリと首を立てに振った。排泄器官でしかない場所に、指を沈められる気分というのは、どんなものなんだろう。あんなに恥ずかしがって必死に閉じていた脚を開いて、指に適応しようと必死になる姿を見ながらみょうじは思う。
恐る恐る指を動かすと、ドラッグストアで買ったローションで濡らしておいたおかげだろう、すんなりと指が動いた。じゅぶ、という空気がそこに混ざりこむ音がして、それに反応した菅原がぎゅっと目を瞑って身体をかたくする。
「……良いところ、どこかな」
「知ん、ない、」
「一緒に、調べたじゃん、スガが気持よくなれる場所があるって、」
「……んっ、」
ぐりぐりと枕に柔らかい色の髪の毛を押し付けるようにして首を横に振る。それを見ながら、ああ、恥ずかしいのか、とみょうじは気づいて、ごめん、と言った。
「俺が、探すから」
指先に神経を集中させながら、みょうじは菅原の反応を観察する。わかりやすいのはひくひくと動く大腿の内側だと、菅原の性器を舐めたときに気づいた。
その時も、菅原が嫌がっていたのを頼み込んだから、みょうじは気づいたことを菅原に言わなかった。割合、思ったことをすぐ口に出してしまうみょうじとしては珍しいことだった。
「ぁっ、」
反応の違いはすぐにわかった。ああ、わかりやすくてよかった、とみょうじは思いながら、身体を震わせて、快楽に染まりはじめた身体をみょうじの目から隠そうと身体を捩る菅原の身体を押さえた。
ここが良いんでしょうとか、そういうことを言うのは菅原には逆効果のような気がしていて、みょうじは見つけたそこをぐりぐりと指で抉ってみる。
「っあ、……や、っだ、」
菅原はビクビクと震えながら顔を隠していた手を、身体を押さえるみょうじの手に重ねた。晒された菅原の顔は、うす赤い明かりの中で、そうだとわかるくらいに赤かった。濡れているのは目元だけじゃなくて、口元までこぼした唾液で濡れていて、みょうじはそれに、自分の内部で跳ね上がる劣情を感じた。
「もう一本挿れるね」
首を、縦に振っているのだか横に振っているのだかわからないような状態の菅原に、みょうじは断りだけを入れて、そこに、指をもう一本押し込んだ。意外にあっさりと、みょうじの指を受け入れたそこを、二本の指をばらばらに動かしながら蹂躙する。ぐしゅぐしゅと濡れた音がして、みょうじはその音が淫靡で、とてもいいといいと思いながら、音が大きくなる指の動かし方のコツを掴んだ。
「んっ、」
その指の動きにも、音にも菅原が感じていることを見て取りながら、みょうじは自分の心臓が早鐘を打つ音を聞いていた。
みょうじが指で菅原の前立腺のあたりを擦ると、菅原は身体をビクビクと仰け反らせて声を押さえて喘ぐ。
「っふ、……っぁ、んッ」
執拗に責めると、菅原の性器からはとろりと透明な蜜をこぼす。下腹部に力を入れるようにして大腿の内側を引き攣らせた菅原は、絶頂の直前のような顔をしていた。それが、性器を愛撫されているときよりも、なぜだかずっと、ひどく官能的で、それに生唾を飲み込みながら、みょうじは性急だとわかっていながら、菅原のそこに、もう一本指を足した。
少し皮膚が引っ張るような抵抗があって菅原が息を詰める。それでも指は簡単に内部に含まれていった。菅原の性器が萎えていないことを確かめて、それにほっとしながらみょうじは指の動きをとめた。
「……痛い?」
「……ッん、……だいじょ、ぶ、」
荒い息を吐きながら菅原が言う。それを、みょうじはすんなりと信じることにして、良かった、と言った。
「ねえ、スガ、三本入ったよ」
「ん、」
「挿れても、大丈夫かな」
そう聞きながら、みょうじはぐぷと、わざと大きな音を立てながら指を僅かに動かす。そうすると、菅原の内部が物欲しそうにひくついてみょうじの指に絡みつくのがわかる。
「……いい、よ」
はぁ、と大きな息を吐きながら、菅原は身体の力を緩める。とろりと情欲で潤んだ目が、まっすぐにみょうじを見ていた。
「へーき、だから」
本当に平気なのか、みょうじには強がりな菅原のことがわからなくて、何かを言おうとして、それから口を噤んだ。
菅原は、みょうじに弱音を吐いてくれない。みょうじが恋をして、奇跡的に菅原も恋をして、両思いになった過程でも菅原は最後までみょうじに気持ちをあかしてくれなかった。だから、ずっと一人相撲をとっている気分だったみょうじは菅原が『俺も、好きだよ』と言ってくれた時、心臓が止まるかと思った。
みょうじと菅原はクラスは同じだけれど、この間の席替えで席だって遠くに離れてしまったし、みょうじが塾で忙しい間、菅原は部活に忙しい。でも、メールで今日の部活の出来事を送ってくれる。3年になってから、すごいセッターが一年生に入ってきた、と菅原は興奮気味にメールをくれた。それから、他の一年生のことや、練習試合のことなどを次々にメールしてくれたりしたのだが、みょうじはバレーに疎くて、保存してあった菅原のずっと前のメールを読み返して、菅原がセッターというポジションだったことを思い出した。
菅原は、みょうじに悩み事を相談してくれない。きっと、幾つもの思いを抱えているはずなのに。
ぐるぐると頭の中を巡っていった葛藤は、ざらざらと砂の城のように砕けていく。
なんて、自己中心的なんだろう、と頭を批判が掠めていって、それを無視しながらみょうじは指を、そこから引き抜いた。
開放されたそこはきゅうと萎れるように緩く閉じる。ひくひくとそこが動いているのを確かめながらみょうじは性急に、そこに自分の猛りを押し付けた。
「……っ、」
菅原が息を詰める。慎重にならなくてはならないことは十分にわかっていたが、はやる気持ちが背中を押してくるような錯覚に陥る。
目を瞑って衝撃に備える菅原に、みょうじは胸の奥が焼かれたような衝撃を覚えた。

「――ッあああ!!」
菅原の悲鳴を聞いて、自分が一息に菅原を貫いたことを知る。
「……アツい、」
内部の熱を直接に感じてそう、思った。柔らかい粘膜の感触がとても良くて、◯は早々にイッてしまいそうになるのを何とかこらえて、顔を上げた。荒い息を吐く菅原の腹の、綺麗な腹筋が白濁に汚れて呼吸とともに揺れていた。肌の熱に溶けるようにぬるりと滑る粘り気のある液体は、菅原のもの意外にはあり得ない。
挿れられて、イッたのだと頭の隅で理解しながら、鼓動が疾るのを知覚した。
「スガ、すごい、」
「んぅ、あっ、」
貫いた剛直で持ち上げた身体を揺すると、菅原は熱に浮かされたように濡れた唇を戦慄かせて喘いだ。触ればコリコリと音のしそうな程にかたく勃った乳首も、それを乗せて揺れる胸板も、連動してうごめく綺麗な腹筋とそれを汚す精液も、みょうじを受け入れる為に開いた脚を伝う汗も、劣情に塗れたすべてが、ひどく扇情的だった。
みょうじが指で弄った場所を狙って性器の先のかたい部分で擦り上げると、絶頂したばかりで萎えたスガの性器が、ゆるゆると芯を持ち始める。
「ァあッ、あ、あっ、」
なされるがままの菅原の身体を身体を屈めるようにして抱くと、菅原が力の入らない手でみょうじの身体に縋り付いた。菅原の匂いがする。菅原のベッドだからか、いつも感じるようりも濃い匂いに酔いそうになった。
「すごい、」
こんなに菅原は色っぽかっただろうか。もしかして、彼をこんな風にしているのは自分なのではないか。そういう、陶酔に似た劣情で菅原の身体をむさぼりながら、みょうじは彼の首に吸い付いた。
「んんぅ、あっ、」
痕をつけていることだって、菅原にも分かったはずなのに、菅原は駄目だと言わなかった。それをいいことに髪の毛にギリギリ隠れない位置に鬱血痕を残す。とろとろに潤んだ目で、菅原はみょうじを捉える。目があった。それだけで堪らなく興奮して、みょうじは強く腰を穿つ。喘ぎながら菅原は唇を薄く開いて、ぬらぬらと光る赤い舌をみょうじに差し出した。キスを求めているのだと、すぐにわかった。
こんなに、濃い色香を、彼が持っていたなんて知らなかった。
それとも、やっぱり、今、こんな風に変化したのだろうか。
花が、開くように?
差し出された舌を吸いながら、胸の奥が恋に落ちた時よりもずっと慌ただしく軋むのを感じていた。




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