部誌4 | ナノ


バッテリー切れ携帯電話



不意に手の中にある携帯に目をやる。もう決して着信のこない連絡先。
未だにガラケーなのは仕様がない。ルークやキスメみたく使いこなせない。使いこなせる所か最低限のことも出来ないかもしれない。従来の折り畳み式携帯をあけ、一つの連絡先を選択する。
この連絡先を登録したのは数日前だった。




「は?連絡先交換?」

魔理沙は思わず鸚鵡返しに聞いてしまった。おそらく呆れた、むしろ意味が分からないという顔をしているだろう。そんな魔理沙に構わず、根玄は愛想笑いを浮かべ返事を返す。

「えぇ。一緒に行動するとしても何が起きるか分かりません。バラバラになっても連絡を取る手段があった方が合理的だとは思いませんか?」

手を後ろで組み、にこにこ。
根玄の言っていることは正論だ。だが、敵かもしれない相手と連絡先を交換してもいいのだろうか。
顎に手を置き、考え込む様子を見ると根玄はため息を一つつき、魔理沙の持っていた携帯を取り上げた。

「あ、こら!何勝手に…!」
「今のご時世、ガラケーですか……時代遅れもいいところだと思いますよ?まして刑事ともあろう女性が」
「う、うるさいんだぜ!スマホにすると、使えない気がして…」
「使いこなす必要なんてないと思いますけどね。ちゃんと使えれば」
「うぐ」

そんな話をしつつも、根玄はパチパチと携帯に自分の連絡先を登録していく。
1分くらいだろうか。パタンと閉じた魔理沙の携帯は魔理沙の手の中へと返ってきた。

「あぁ、寂しかったら電話してもいいんですよ?生憎、私の守備範囲外ですが、話し相手にはなってあげますよ」
「うるせー!」





そんな会話をして登録された、『根玄正雄』。
結局一度も電話もメールもすることなく、もう使われることもなくなった。敵ながら凄惨な最期であり、未だに自分の心の中をしめる理由でもある。最期の最後で魔理沙を気遣い、自ら落ちていった。
心のどこかで、あいつは死んでも死なないんだ、というところがあったせいか、ひどく動揺したことを覚えている。助けられなかったのが、きっと生涯ずっと、付きまとっていくんだろう。

ピ、と選択してあった『根玄正雄』に電話をかける。
どうせかかるはずがない。そう思っていた。回線を探す音が響いた後、予想外の言葉に耳を疑う。

「おかけになった電話番号は、電波の届かない場所におられるか、電源が……」



どうして繋がっちまうんだよ





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