部誌4 | ナノ


ルミネセンスの瞳



雪がしんしんと降り積もる北の果ての町。
町のさらに隅っこに小さな病院がありました。
その病院には二人の医者がおりました。

ひとりはとても背が高く、杖をついていました。
ひとりはとても背が低く、分厚いめがねをかけていました。
見た目はまったく違う二人でしたが、二人とも体はボロボロでした。
片や自ら実験台になり、片や実験から生まれた人でした。

「なーエディ、培養液どこ置いたー」
「棚変えたって教えたじゃないですか!向こうの棚です!」

そんな二人にはひとつの目標がありました。
自分たちの身の回りにいる、体のどこかが欠けた者たち。
その者たちの体を治したいと日々研究を積み重ねていました。

「っていうかカムイさん、こないだ眼球サンプルだめにしたでしょう!」
「・・・ちっ気付いてやがった」
「もー!あれ一番僕がんばってるんですよ!邪魔しないで下さい!」
「目ん玉よりナカミのほうが速いだろうが・・・」

ぷりぷり怒りながら、エディは病院の研究用の部屋に引っ込みます。
カムイも、怒ったエディを追い研究室n入っていきました。

「なぁエディよぉ」
「なんです」
「目ん玉作っても見えねぇだろうよ、あの小娘にだろ」
「義眼ってことで、綺麗なの作ってあげたいんです」

黙々と作業を進めるエディ。
後ろでそれを眺めるカムイ、ふと思い立ったように研究室から外へ。
自室に入ると、何かを鷲づかみにしてまた、研究室に戻ります。
そしてそれをエディに投げつけるのでした。
結構な鈍い音が部屋に響きます。

「こ、殺す気ですか・・・」
「綺麗なのがいいんだろ、瞳孔それ使ったれ」

そう言われ、投げつけられた物を確認します。
それは宝石の原石でした。
キラキラ光って綺麗です。
これをうまく削って作れば、それはそれは素敵な瞳になりそうでした。
エディに細工ごとはできないのだけれど、そういったことに詳しい人が知り合いにいました。
その人に頼んで、あとはエディが作る眼球につけて、なんとかなりそうでした。

「いいんですか、これ」
「俺興味ねぇから別にいいが高ぇんだぞそれ晩飯おごれ」
「・・・はいはい」
「あとな、それ夜光るんだよ、ぼんやりだけどな」

エディが瞳を贈ろうとしている少女は、見世物小屋で働いていました。
明かりの少ない薄暗い舞台の上、そこでは小さな光がとても目立つのです。
日中の光を、暗闇で放出するその宝石は、おそらくとても映えるでしょう。
くるくると舞台の上を舞う少女の動きに合わせて、綺麗な光を映し出すでしょう。

「いやーモテるだろうよ」
「そんなことしなくても、あの子はあの小屋で一番の踊り子ですよ」
「おめぇがだよ、好きなくせにあの小娘、ロリコンかぁ」
「うるさいですよ・・・ちょっと職人さんとこ言ってきます」

彼女は喜んでくれるだろうか。
光を映すことはない光を放つ瞳で、自分を見つめてくれるだろうか。
そんなことを考えながら、うれしそうな表情を隠すでもなくエディは部屋を出て行きました。




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