部誌2 | ナノ


月並みですが



今日は珍しく部活がオフだから(と言っても所詮は試験前だとかいう理由ではあるが)、ふたりでまず決めたのはこの日は絶対デートしようね!ということだった。真面目な彼女が試験前にも関わらず二人になりたがるということはかなり我慢させていたんだなぁとぼんやり気づいて、罪悪感と愛しさが急激に込み上げてきてたまらなくなる。
まぁそんなことは置いておき、今朝から放課後が楽しみで仕方なくていつも以上にずっと彼女を目で追って。すっかり慣れた一番うしろの席からこっちに気づけとテレパシーを送り続けていた。

あぁ早く放課後にならないかな、なんて。いつもなら絶対に思わないようなことを考えていた。
昼休みだって弁当食べてそのあとはいちゃいちゃしたいけど人目があると怒られるし我慢するしかない。かなり苦しい。目の前にいるっていうのに。
長い。長いよ授業。早く終われよ。寝てたらすぐに終わるくせになんかそわそわして寝れねー。
もうすぐ。もうすぐ。終礼の連絡事項なんてまったく耳に入らない。いいんだなまえが教えてくれるから。

担任の出した解散の合図と共に立ち上がって荷物を持った。自分でもこっ恥ずかしいけどしょーがねーし!

「なまえ、帰ろ」
「早いよあっくん」
「もー、はやく」

まだみんな教室にいるけどお構いなしに手をつかんで外へと向かった。

「今日どこ行きたい?」
「おれん家〜」
「?珍しいね」
「はやく二人になりたい、あと暑い」

うわぁなまえ、不思議な顔してる。視線が痛い。でもまんざらでもなさそう。
いつもみたいになんてことない雑談をして、歩いて、彼女を家に迎え入れた。自分の家のように慣れた様子で紅茶を準備してくれるのだ。ほんと、新婚さんみたいで、照れる。
働き者のクーラーのおかげで冷えた部屋で、紅茶を飲んで一息ついたらもうそろそろいいかなぁ今日ずっと我慢してた!

「なまえこっち、ここ座って〜膝の間〜」
「はいはーい」
「ねぇ好き、なまえ好きだよ」
「あっくん今日変だよどうしたの」
「なんもおかしくねーし。駄目なの?」
「私も好きだけどー」
「だってなんか他のやつと仲良くしてたし」
「妬いてたの?」

そうだよ。科学の授業、グループで実験。班交代の掃除に、くじ引きで席替え。学校というところで生活していると、よく見る光景である。他の男に声かけられてるところとか見たら捻り潰したくなるからほんとやめてほしい。

「べつに妬いてねえし」
「へへーあっくん好きだよー」
「知ってるしー」
「わたしだってあっくんモテるからいつも妬いてるんだよ」
「……」

もうほんと、なに、好き。大好き。やばい。
にやけを抑えきれてないけど見上げられない限り見られることはない。から大丈夫、だけど。

「なまえ好きー愛してるー」
「わたしもー」

ボキャブラリーも少なくて表現に乏しい、ほんとに月並みだけど愛の言葉を。お嫁さんにもらえる日がくるまでにもっとかっこよく言えるようになるからさ、いまはこれで許してほしい。とりあえず、手近な目標としては、試合でかっこいいところ見せないとなぁ。めんどくさいけど頑張ろう。と思えるようになったあたり、彼女の存在はやはり大きいようだ。




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