部誌2 | ナノ


あかいくつ



夢を見た。

雪と雲で白く染まる世界。
雪原の中、誰かを探して歩く夢。
酷く、懐かしく感じる夢だった。

探している人物はどうやら男で、その男を求めて歩くうちに、夢の中の自分は獣の姿であることを知った。

どこまでもどこまでも続く雪原、ずっと遠くに明かりは見えているが、たどり着く気配はない。
景色が変わることはなく、もはや歩いているのかもわからなくなるような世界だった。

気付けば、小さな家の前に居た。
小さな家の小さな煙突からは煙があがり、暖かそうな明かりが灯っていた。

そして、家の前には赤い水たまりがあった。
その真ん中で、男が倒れていた。
真っ黒な髪の男だった。

こいつは探している男じゃない。

なぜかそう思った。
男はもう冷たく、動くことはなさそうだった。
どうしたものかと考えていると、小さな家のドアが開く音がした。
振り返ると、そこには、はちみつ色の髪をした少年がいた。

あぁ、こいつだ。

少年は、おびえているようだった。
怪我をしている様子はないが、この男とどういう関係なのだろうか。

少年に近付き、匂いを嗅ぐ。
あぁやっぱりこいつだ。
そう思った時、体に衝撃が走り、赤い血が飛び散る。

「・・・・・!」

少年が何か叫んだが、聞こえない。
ぼやけ傾く視界。

どしゃ、と倒れた自分が最後に見たのは、自らの血に染まった、少年の姿だった。



「夢にしてはリアルだねぇ」
「だろ、何なんだろうな一体」

夢の世界とは違う色で染まる世界。
空と海で青く染まる世界。

大海原に浮かぶ帆船の上で、男ふたりがのんきに煙草をふかしていた。

「君が忘れてる昔の記憶か何かじゃないの」
「とも思ったが、まぁ何でもいいわ、忘れる」

そう、呟いたものの。
少年が履いていた、妙に赤い靴の色だけは忘れられそうになかった。




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