部誌3 | ナノ


この夜が明ければ



朝起きるには早い時間、高い高い空の上
どうやって架けたかわからない天空の架け橋のちょうど真ん中
寒くないように暖かい格好をして、遥か下の見えない地上を見つめていた

「・・・はぁ」

耳の奥にあの生物の咆哮が響く
漆黒の何かを撒き散らしながら飛ぶあの生物
アイツでも結構恐怖を感じたのに、あいつが古龍になっただなんて

「こわい」

勝たなきゃいけない
勝たなきゃここに居られなくなる
大好きなあの方が大好きなここがなくなってしまう

そんなのは絶対にいやだ

いっそここから飛び降りて逃げてしまおうかとも思ったけれど
そんなことしたら本当にここが無くなってしまう
今アイツと戦えるのは私だけなんだから

もう一度大きなため息をついて、少し休もうかと思った時

「旦那さん旦那さんここにいたニャー」

ててて、と駆け寄ってきたオトモくん
手にはくるくると回る橙色のかざぐるまを持っていた
ぐぐっと背伸びをして私にかざぐるまを渡してくる

「それ、どうしたの」
「君にと思って作ったんだよ」

その声にびくりと体が震えた
いつもの見慣れた格好で微笑む彼
少し泥に汚れたいつもの格好

「だいそうじょう、さま」
「今まで通り畑のお兄さんって呼んでくれたらいいのに」
「いや、あ、いえそんな!」

慌てて首を振るけれど、私を納得させるように彼がもう一度微笑んでくる
その表情に、私はこくりと頷いた

「夜が明けたら行くらしいね」
「・・・はい、ぐずぐずしていられませんから」

この人のために
やさしいみんなのために
私は戦おうと思う

「君を信じているよ」
「ありがとうございます」
「待っているよ」
「はい、行ってきます」

このやさしい風の村で
待っててくれる人たちのために

私は戦う




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