部誌3 | ナノ


これを恋とは認めない



ぎゅっと握られた手に思わず肩が跳ねる。
隣では仗助が明後日を見つめて誤魔化してたけど、チラチラと目線が私にきているのがバレバレだ。

「ちょ、何急に。」
「あ?…別に、手が冷たいだけだし。」

ぶすっと頬を膨らませてあからさまに機嫌が悪いように見せてる。
握られた手は確かに冬の風で冷たくて、そういえば手袋を教室に忘れてしまったことを思い出した。

「仗助の手は大きいね。」
「…まあそりゃあ、男だし?」

私の手をすっぽり隠してしまうほど大きくて、ちょっとだけゴツゴツしてて、何時も見ているのにこうして触れることで気づくことが嬉しい。
隣で照れてぶっきらぼうに受け答えた仗助はそれでも優しく私の手を包んでくれるから。
リーゼントして、周りから疎遠にされがちな仗助を表しているかのようだ。

「寒いね。」
「おぅ。」

何気なく漏れる一言にちゃんと答えてくれる。
どんなにくだらなくても。

「…仗助「言うな。」

ぎゅっと強く握られた手が痛い。
それだけじゃない。
私の言葉を遮るように声を固くさせる仗助の気遣いが胸を刺す。
言いたかった想いがでない苦しさが、私を俯かせた。

「…俺たちはこのままでいい、このままがいいんだ。」

まるで言い聞かせるように呟いた仗助は無理に笑ってみせた。
何時ものような、暖かい笑みじゃないから、私は辛くて仕方ない。

「勘違いしてんだよ。だって長いこと俺の傍にいた女なんてお前位で、お前にも俺しかいなくて…だから違うんだ、きっと。」
「……」

もう春が近いはずなのに何で風はこんなにも冷たいのだろう。
寒さのせいで震える体が憎い。
決して仗助の言葉で傷ついてる訳じゃないのに、困ったように見つめる仗助が勘違いしてしまうじゃあないか。

「泣くなよ。」
「…泣いてないよ。」

寒くて寒くて、寒くて仕方ない。
鼻水が垂れないように啜ってもまだ足りない。
寒さのあまり、涙が出てしまう。
優しく目尻をぬぐう仗助の手だって冷たくて、余計に涙がでてしまう。
これだから冬は嫌いなのだ。

「ねぇ仗助。」
「何だ?」
「私ね、それでもいいと思うの。それでもいいから、一緒にいたいの。」
「……」
「でもね、仗助がそれを望まないならそういうことにしとく。」
「なまえ…」
「でもこれだけは約束。」
「何だ?」
「もし、次があるなら…生まれ変わりがあるなら、次こそは私を選んでね。」
「…あぁ、必ず。」
「約束だよ?」

寒さのせいで上手く笑えない。
頬を涙が伝うのが分かる。
それでも仗助の為に出来る限り可愛く笑う。
くしゃりと顔を歪ませた仗助は強く私を抱き締めた。
制服の隙間から覗く首筋に、私と同じ星形の痣がキラリ。
とても憎く見えた。




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